長野「渋温泉」ロウリュウサウナで心身休息そして、濃厚な温泉で締める~Deportare Trip vol.12
1300年前の開湯以来、草津街道の宿場町として長い歴史を重ねてきた「渋温泉」。源泉が豊富で、温泉街の全ての旅館と9つある外湯(共同浴場)は100パーセント源泉掛け流しの湯が堪能できます。
「温泉は無色透明だったり、鉄分が多くて褐色を帯びたものだったり、とさまざま。外湯も全部泉質が違うので、いろんなお湯が楽しめます」
と語るのは、「春蘭の宿 さかえや」五代目当主・湯本晴彦さん。こちらの宿は、肌に優しい弱酸性のお湯で、ぽかぽかした体感が長もちするのが特徴だと言います。
2年前に新設したロウリュウサウナ付き貸切温泉は2カ所。サウナ室、水風呂、そして内気・外気浴スペースがコンパクトに収まっていて、動線がいいのもうれしい。天然温泉に浸(つ)かれるので日帰り利用も便利です。サウナと水風呂で心身を休めた後に温泉成分が濃厚なお風呂で締める。そんな新しい経験ができるのもこの設計ならではです。
志賀高原の自然を感じながら、湯煙立ち上る温泉街を浴衣(ゆかた)姿でそぞろ歩いてみませんか。
古き良き温泉街で100年“やさしくなれる”おもてなしの宿
東京から約3時間。長野県の北東部に位置する山ノ内町にある渋温泉は、古くから湯治場・宿場として栄え、“天下の薬湯”として親しまれてきた。今もなお、古き良き石畳の風情を残し、細い路地の両脇に木造の温泉宿や土産物屋、射的やスマートボールなどの昔懐かしい遊興施設が軒を連ねる。
また、温泉街の周辺には、入浴する野生のサルが見られることで有名な「地獄谷野猿公苑」や、志賀高原で最も大きい湖沼で、コバルトブルーに輝くことで知られる「大沼池」などの人気の観光地も。
そんな魅力いっぱいの渋温泉に昭和2年に創業し、4年後には100周年を迎える「さかえや」。
「渋温泉には、江戸時代から続く温泉宿も多く、創業200~300年なんてざら。創業してまだ100年足らずの当館は、新参者なんですよ(笑)」と語る湯本さんは、近年、ロビーの改修をはじめ、コロナ禍における3密回避のための半露天風呂付きの客室や、サウナ好きを取り込んだロウリュサウナ付き貸切温泉を新設するなどの攻めの経営を続けている。
宿のコンセプトは、“やさしくなれる宿”。
「当館を訪れた人たちが、やさしい気持ちになって帰ってほしい。そんな思いから私たちが特に力を入れているのが、親孝行、お祝い、記念日といったお客様の特別な日を演出することです。プロポーズの演出などのためにお部屋の飾り付けをしたり、夕食時にお祝いや感謝を伝えるメッセージプレートやケーキをご用意したり。大切な人へのサプライズや、普段なかなか伝えられないメッセージを形で表すためのお手伝いをさせていただいています」
さらに、そのようなサービスを実現するため、従業員の教育にも力を入れているという。
「従業員には、人にやさしくなるためには、『まず、私たちスタッフがやさしくなろう』と話しています。自分一人でよくなることよりも、周りから応援される人になるほうが人として幸せになるんじゃないかなあ、と。うちの宿は、みんなで力を合わせて一つのものを作るとか、みんなで接客するとか、そういうところがいちばんの強みだと思っています」(湯本さん)
客室は、露天風呂付きスイートルーム2タイプから始まり、和モダン客室3タイプとスタンダート和室2タイプの全7タイプから選べる。満天の夜空を望む「宵待スイート」は、スタイリッシュなしつらえと源泉掛け流しのプライベート露天風呂が付いた特別室。夜には光壁が付き、その名のとおり幻想的な景色が楽しめる。
なかでも、2名専用の客室となっている和モダンは、奥信濃の生活様式を現代風に再現した「Shinanoモダン」と洋間を和風化した新感覚和室「都季の蔵」、そして、坪庭を望む高床式畳コーナーが特徴の4名まで入れる「畳座」、とそれぞれに居心地のいい空間が広がる。
「古民家風の雰囲気を残した『Shinanoモダン』は、冬になると炬燵(こたつ)にできるようになっています。信州伝統工芸の内山和紙を使った雪見障子、須賀川の竹細工を生かした照明、そして草木染めの技法を伝統的な悠然に取り入れた信州手描き友禅、と伝統工芸家たちとのコラボレーションが生み出される極上の空間のなかで、日ごろの疲れを癒していただけると思います」
そして、おもてなしの宿の代名詞となるのは、演出を凝らした創作和懐石「懐石こまち」。渋温泉周辺で採れる「小布施丸ナス」や「常盤ごぼう」といった伝統野菜や、「信州牛」や「黄金シャモ」、「信州サーモン」などの新しい信州ブランド素材が使用されている。春には地元の山菜、初夏には志賀高原の根曲り竹、秋には、信州産松茸など、旬な食材を使ったお料理を味わえる。
「また、当館では、皇室献上米に選ばれた北信州の小柳農園で作られているお米を使用しています。長野の名水で育てられたお米は、粘りと甘みがあって、炊き立てはもちろん冷めても美味しいんですよ」
笹野美紀恵
サウナトータルプロデューサー。実家は、“サウナの聖地”と称される「サウナしきじ」。サウナは単なる“熱い箱”ではないと提唱し、五感で感じられるサウナ、温浴施設などの総合ウェルネスプロデュース・PRを手がける。
春蘭の宿さかえや
長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2171
TEL:0269-33-2531
長野電鉄「湯田中駅」より車で約7分
長野自動車道「信州中野IC」より志賀中野有料道路で渋温泉へ車で約15分
https://e-sakaeya.jp
〈大浴場・日帰り入浴〉
大浴場は、天然温泉掛け流しの内湯と高濃度炭酸泉、そして天然温泉掛け流しの露天風呂の3つが楽しめます。
■利用時間:10時~12時、14時~19時
■料金:1名1,300円(タオル・バスタオル無料レンタル付き)
〈サウナ付き貸切温泉・日帰り入浴〉
■「森の癒し」(6F)利用時間:14時~22時半、6時~11時半、外気浴あり
■「水の癒し」(5F)利用時間:14時~21時、6時半~11時、外気浴なし、山の湧水を使った掛け流しの水風呂あり
■貸切料金 森の癒し・水の癒し(共通):1室1名5,000円、2名7,000円、3名9,000円、4名10,000円
写真:福田ヨシツグ 取材・文:笹野美紀恵 編集:服部広子