奥出雲にて『古事記』を歩く そこは神話と自然に触れられる場所
伯耆国(ほうきのくに)は日本刀の故郷 今も鬼退治の伝説が残る
733年に編纂された現存最古となる地誌書『出雲国風土記(いずものくにふどき)』。出雲国の成り立ちが綴られた国引き神話に、「伯耆国なる火神岳(ひのかみのたけ)」として登場する大山は、文献に見える日本最古の神山だ。
天下五剣(てんかごけん)に挙げられる国宝「童子切安綱(どうじぎりやすつな)」を生み出した平安期の名匠・安綱。日本刀に「反り」をもたらした革新者は、伯耆国大原で刀と対峙していた。伯耆町には、伝承地の石碑が建つ。
日南町にある樂樂福神社(ささふくじんじゃ)は、日野郡の鬼退治をしたという伝説が残る第七代孝霊(こうれい)天皇とその一族を祀る。古くは、砂鉄生産の守護神としても崇敬されていた。
国の名勝・天然記念物に指定される巨岩と渓谷美のパノラマ「鬼の舌震(したぶるい)」は、鬼が刀を試し斬りしたと言われる「鬼の試刀岩」をはじめ、伝説と自然が溶け合う。
町を歩けば、視界には『古事記』に登場する船通山と斐伊川(ひいがわ)が広がる。
また、スサノオノミコトがイナタヒメと結ばれた地と言われる八重垣神社跡も訪れてほしい。松江市にも八重垣神社があるが、ここにも出雲神話のルーツが眠る。
写真 久保田光一
取材・文 我妻弘崇
編集 高田真莉絵