温泉好きでも知らない「油湯」とは?氷見で出会う、日本海と立山連峰の特等席
氷見という町には、海と山が同時に心に迫ってくる瞬間がある。目の前は日本海、遠くに浮かぶ立山連峰。そして身体を包み込むのは、香ばしくとろみのある珍しい温泉「油湯」。廃業の危機を乗り越えた宿「民宿あおまさ」で、三代目女将と夫が生み出したサウナ文化が新しい旅人を呼び込んでいる。湯、サウナ、氷見の海の幸。すべてが揃ったとき、この町の時間はゆっくり深く整っていく。
日本海と立山連峰を望む、氷見という特等席。
極上の油湯とサウナ、海の幸に沈む宿

すごい湯に出会った。オイルのような香ばしさと、肌にとろりとまとわりつく濃厚な泉質「油湯(あぶらゆ)」。名湯を巡ってきた私にも初めての感覚が走る。
目の前には日本海、その先に今、「プライベート立山連峰」を独り占めしているのだ。ここでの幸福のお裾分けは、絶景と湯だけではない。

「民宿あおまさ」はコロナ禍で廃業の危機に陥るも、3代目・青木栄美子さんが承継。実家を継ぐというのは一筋縄ではいかない。もともとアナウンサーとして活動してきた栄美子さんは、自身が「今できること」を片端からやった。SNS発信、食事や温浴の改善。夫・辻井隆雄さんの熱意とセンスで新築したサウナは新たな客を招く。
そんな中追い打ちをかけたのは、2024年元日の「能登半島地震」。いち早く炊き出しに奔走し、復興に力を尽くした。ひたむきな愛と行動が宿を、街を、そして訪れる人の心を温める。旅の記憶は、いつだって人との出会いに宿る。


内湯の「油湯」で芯から温まったところで、外のサウナへ。外に並ぶ2槽は、地下水の水風呂と、油湯の源泉。この源泉のぬる湯が、水風呂後にまた最高。


食事はまるで氷見の幸の玉手箱。隆雄さんの人柄で、地域の人から仕入れや包丁捌きを一から学んだ。1972年創業の宿を2023年に元アナウンサーの女将・栄美子さんと元警察官の隆雄さんが二人三脚で再興。

この日は幸運にも朝の眩(まばゆ)い日の出にもお目にかかれた。サウナは唯一無二のロケーション!ガラス張りで連峰と海を見渡せ、湿度と温度のバランスも抜群。
民宿あおまさ
案内人・笹野美紀恵
実家は、“サウナの聖地”として知られる静岡「サウナしきじ」。ホテルの温浴施設をプロデュースするほか、医療機関とオリジナルの薬草入浴剤を共同開発するなど、未病予防にサウナを活用する取り組みも行っている。
撮影 金子斗夢
取材・編集 中野桜子
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