八雲立つ出雲、崖の中の〝洞窟〟ホテルで自然と一体になる~Deportare Trip vol.10/島根
八雲立つ出雲で水平線と満天の星を望む自然と一体になる洞窟ホテル
サウナの聖地「サウナしきじ」(静岡県)の娘である笹野美紀恵が、数々のサウナや温浴施設をプロデュースしてきた経験と、女性の視点で選りすぐりのスポットを紹介します。
「Deportare Trip~旅で潤う」連載第10回目で訪れたのは、今年5月、島根県出雲市の最先端の町にオープンしたリゾートホテル「IZUMO HOTEL THE CLIFF」。砂浜から約10メートルの断崖のなかに造られた客室は全て海辺に面し、広い空とオーシャンビューを独り占めできる自然一体型ホテルです。
完全プライベート空間を楽しめる客室は全8室。ジャグジー付きのテラスからははるか遠くの水平線が一望できます。
「〝八雲立つ出雲〟といわれるように、本当に湧き上がるような美しい雲が見られます。夜には漆黒の空にきらめく満天の星など、時間とともに変わる景色を楽しんでいただけます」
と、プレス担当の福地恵理さん。シーサイドラインを20分ほど車で北へ向かえば、出雲大社や稲佐の浜などの観光スポットも。
今回、こちらの温浴・サウナは私が監修しました。宿泊者限定サウナは、ロウリュウの香り付けのアロマに出雲の植物など全てオーガニックのものを使用。「経皮吸収」という言葉もあるように、皮膚や鼻から体内に取り込むものにもこだわりました。
サウナは五感で感じるもの。極上の癒やしがここに……。
温度は90度ほど。ホテルの宿泊客のみが利用できるサウナルームは1組ごとに貸切りで提供。
一枚の絵を切り取ったような水風呂はガラス窓など遮るものがなく、外気が直に感じられる。
出雲市最西端の町、多伎町に食の力で地方創再生を目指すプロジェクト「WINDY FARM」の宿泊施設として5月1日グランドオープン。自然と一体になったようなCAVE(洞窟)の中のゲストルームは、部屋の中からでもオーシャンビューを楽しめる。8室のベストルームのほか、1日1組だけの別棟ヴィラ(宿泊人数7名)も隣接。
案内人・笹野美紀恵監修の出雲流サウナの入り方
STANDBY
1. 身体・頭を洗います。絞った濡れタオルを2つ持ちましょう
1つめは顔巻き用に、2つめはサウナマットの上を拭いたり、汗拭きに使ってください。
2. まずサウナに入る前に水晶水をゆっくり3~5口飲みます
いきなり大量のお水を飲むと身体に水を吸収できません
3. サウナ室に入ったらお好みのアロマをお選びください
柄杓(ひしゃく)を使ってロウリュウへ2~3周掛けてあげましょう
ストーブの石から出てくる蒸気の音を楽しみましょう
ENJOY!
1. お好きな段で座ってみましょう
お勧めは胡座(あぐら)
(身体をコンパクトにすることで体感熱温度差を少なくしましょう)
姿勢をなるべくまっすぐに
(姿勢が悪いと肺が潰れてしまいます)
2. 湿度を調整してみましょう
3. サウナの中ではぼーーーと何も考えずゆっくり熱と湿度を楽しんでください
呼吸はゆっくり細く・長く息を吐くことを意識して、熱と湿度を楽しみましょう
(目安は8~10分と言われますが無理をしないのが一番大切です)
(出たら桶で汗を流しましょう)
RELAX
1. 両手を上げて大きくゆっくり長く、息を吐きながら水風呂に入ってみてください
2. ゆっくり息を吐いて無理なくいけそうなら、両手を下ろしてみてください。いけるかたは頭を後ろに倒し、頭皮も冷やしてあげましょう
3. 目の上に濡れタオルを置いて、首を楽にし、ゆっくり脱離しましょう
外気浴で風邪を感じゆっくり深呼吸
身体の中の空気を入れ替えるイメージで首の後ろに濡れたタオルを丸めて、首の後ろに引いてみてください。
島根の食のチカラから始まる地域再創生
「WINDY FARM」は、全国に96店舗のカフェやレストランを展開している株式会社バルニバービが推進する地方創再生プロジェクト。少子高齢化、低下する食料自給率など日本が抱える社会問題を、“食べること”を起点に地元と一体となって解決することを目標に掲げている。
「当社では、食から始まる地方創再生プロジェクトとして、観光、二拠点ライフ、移住を見据えた新しいコミューンという形で施設全体を設計しています。施設が建った出雲市・湖陵西海岸はもともと手つかずの自然が残っていたところで、地元の方々からも『多伎町にこんな施設ができるなんて』という声が多く聞かれます。出雲、そして島根の食の力で、 “訪れたくなる町”“働きたくなる”“暮らしたくなる町”をつくっていきたいと考えています」(プレス担当の福地さん)
今回紹介したホテル「IZUMO HOTEL THE CLIFF」のほか、地元の人々も気軽に立ち寄れる185席の大型レストラン「GARB CLIFF TERRACE IZUMO」と島根の食材を使ったハンバーガーやアイスクリームなどを販売する「出雲・湖陵パーキングエリア」も同時にオープンした。
「GARB CLIFF TERRACE IZUMO」は、島根の食材と薪火の特製グリラーで仕上げる薪火料理が自慢。島根県内で肥育された未経産のしまね和牛を薪火のやわらかい火で丁寧に焼き上げた「しまね和牛のグリル」や、奥出雲盆地で栽培された仁多米を、薪火であぶり香ばしく仕上げた穴子と一緒に土鍋で炊いた「地穴子と筍の土鍋ごはん」など、島根の食の魅力がつまったお料理がいただける。
「お野菜にも力を入れていて、出雲の加田屋のトマトを使った『加田屋トマトカプレーゼ』などがおすすめです。糖度の高いトマトと、ミルキーなイタリアの水牛モッツァレラチーズのマリアージュを楽しんでいただきたいです。また、秋には出雲の砂丘地で作られた『西浜いも』は、ほくほくとした甘さが美味しいです。パーキングエリアでは、西浜いもを使ったアイスを販売しています」(ホテル運営責任者・黒川浩輔さん)
ホテル宿泊客には、こちらのレストランのシェフによる島根の食材を味わうディナーコースを提供。開放感のあるテラス席で海と夕日を眺めながら食事を楽しむことができる。
朝食は、ホテルステイにはめずらしい和定食です。仁田米を土鍋でふっくらと炊きあげたご飯、穴道湖(しんじこ)のしじみの旨みを凝縮したエスプレッソや島根の野菜をやわらかく煮たココットなどをホテルゲストのみに提供。
「テラス席で炊き立ての土鍋ご飯を自分でよそって食べられる。これはほかでは味わえない楽しさだと思います。おかずもたくさんあってボリュームがあるので朝からしっかりエネルギーをチャージできます」(黒川さん)
そして、出雲食の魅力は、地元の生産者さんたちの思いを感じられるところだという。
「出雲を中心に生産者さん1軒ずつまわらせていただきました。例えばお米農家さん、炊き立てのあつあつご飯が美味しいのは当たり前ですが、冷めても美味しい仁多米ならではの提供方法を教えていただいたり。加田屋さんのトマトは糖度ごとに丁寧に仕分けされているので、トマトの甘味と相性のいい食材をあわせたメニューを考えたりとシェフが工夫しています。やはり食材もその日の出逢いというのがあって、たとえばお魚のお料理だったら、今日のお魚がどんなところで獲れて、どう調理されたのか、そういうエピソードを聞きながらいただくと楽しいです」(福地さん)
案内人:笹野美紀恵
サウナトータルプロデューサー。実家は、サウナの聖地と言われている【サウナしきじ】。サウナ、温浴施設などの総合ウェルネスプロデュース・PRを手がける。
IZUMO HOTEL THE CLIFF
取材・文/笹野美紀恵 編集:服部広子