帝国時代の栄華を語る、世界で最も美しい下水処理場を訪ねて〜古くて新しい、イギリスのアンティークな街3
世界でも突出した歴史と伝統を有しながら、つねに華やかな文化の中心地でありつづけるイギリス。ロンドンをはじめとする都市部では、最先端の事物を取り入れつつも、古き良き建築を巧みに維持して次世代へとつなげていく街づくりが自然に行われている。今回は、ロンドン東部にひっそりと佇むヴィクトリア時代の遺産をピックアップ。息をのむほど豪奢かつ静謐な装飾は予約制のツアーのみしか受けつけていない、知る人ぞ知る必見スポットだ。
壮麗な時代の文化と覚悟を、人々の手で守り伝える
ロンドン市内の下水処理の一端を担い、公衆衛生を劇的に改善して人々の命をコレラの恐怖から救った「クロスネス揚水所」。正式に稼働を始めた1865年は産業革命による経済発展が円熟した時代であり、この施設の建設にも当時の威信をかけて美しい装飾が施された。計4台のエンジンは技術の進歩に伴い定期的に改良を加えられながら、今もなお稼働を続ける。
揚水所の運営や保全活動には、多くのボランティアの助けが。予約制見学ツアーの運営を引き受けるマイクさんは「たとえ下水に関わることでも、それは人々の命を救った歴史の一部。この場所を自分たちの手で残したいし、その活動に協力できることを誇らしくも思います」と話す。
Crossness Pumping Station
The Old Works, Thames Water S.T.W., Bazalgette Way, Abbey Wood, London SE2 9AQ
写真:松園多聞 コーデ ィネーション:井上亮、長谷川友美 取材&文&編集:山下美咲