今最高にアツい!テムズ川ほとりの最新複合施設、バタシー発電所〜古くて新しい、イギリスのアンティークな街1
世界でも突出した歴史と伝統を有しながら、つねに華やかな文化の中心地でありつづけるイギリス。ロンドンをはじめとする都市部では、最先端の事物を取り入れつつも、古き良き建築を巧みに維持して次世代へとつなげていく街づくりが自然に行われている。中でもロンドンで話題となっている最新エリア、バタシー発電所についてご紹介。
インダストリアルな構造を残し生まれ変わった、巨大なランドマーク
発電所としては1983年に閉鎖して以来、長らく放置されていた世界最大級のレンガ建築が、2022年10月に複合商業施設としてオープンを迎えた。多くの人の手に渡りさまざまな用途が検討されたのち、ようやく新たな役割が日の目を見たのだ。それは人々の“コミュニティ”創出の場になるというもの。多彩なショップやレストラン、映画館、煙突を改装したユニークな展望台のみならず、オフィスやホテル、さらには住居や住民のための庭園も備えている。2023年には、多国籍テクノロジー企業のアップルがUK本社をここに移す予定だ。
リバーサイドの廃墟が、新たな都市生活のシンボルへ
1930年代より50年以上にわたって稼働し、今なおロンドンっ子に親しまれるバタシー発電所。ピンク・フロイドの名盤『アニマルズ』の印象的なヴィジュアル撮影のロケーションとして知られるほか、ビートルズの主演映画『ヘルプ!4人はアイドル』に登場。それ以外にヒッチコックやモンティ・パイソンによる作品、バットマンシリーズの『ダークナイト』、アカデミー賞受賞作『英国王のスピーチ』など、数々の著名な映画作品のロケ地に使われてきた。この親しみ深い巨大な施設をどう次世代に受け継いでいくかについては、長いあいだ激しい議論が交わされることに。過去に頓挫した多数の再開発計画の中には、広大なテーマパークやサッカーのスタジアムへの変身案もあったという。
「サステナビリティが昨今ますます重視される中、歴史的建造物を修復して再生させるのは自然な流れ」と、再開発に携わる資産管理部長のサムさん。「人々が食事や買い物をし、遊び、働くことができる元発電所など世界中どこにもなく、あらゆる人にとっての特別な地になるはず。ロンドンのランドマークが新たな時を刻みはじめるこの瞬間に立ち会えたことは、私自身の人生にとっても非常に貴重でエキサイティングです」
Battersea Power Station
写真:松園多聞 コーディネーション:井上亮、長谷川友美 取材&文&編集:山下美咲