鞆の浦で受け継がれる鍛造とデザイン 潮待ちの港が生んだ“鉄の未来”
潮の満ち引きを待つ静かな港町・鞆の浦で、私は“鉄が未来へ続く理由”を見た。古くから船と共に発展した鍛造の技は、いま現代デザインと融合し、新しい価値へと変わりつつある。槌音が響く工房を歩くと、ものづくりとは単なる技術ではなく、時間と風土を編み直す行為であることに気づく。
港町ならではの伝統的な鍛造技術と最新の技術が融合して創造するデザイン
伝統の鍛造、鍛接技術を駆使したフライパン

中世より交通の拠点として栄えた鞆の浦(とものうら)。その頃から刀や盾を製造する鍛造(たんぞう)技術が発達。戦国時代の終焉後には「潮待ちの港」として賑わい、その技術は錨を製造する技術として発展した。
時代は変わり、錨の需要は激減。鞆の浦でも数少なくなった伝統の鍛造技術“鞆鍛冶(ともかじ)”で「鍛造錨」を製造していた鉄工所も廃業の危機に陥るが、同じ町で鍛冶屋として創業し、現在は最新の金属加工技術で精密加工を行う㈱三暁(さんぎょう)が鉄工所を譲り受け、新部門として引き継いだのだ。
2022年に体験型のフラッグシップショップ「santo」をオープン。鍛造の魅力を体感し、土地の物語も知ることができる空間だ。


【左】好きな文字を刻印できるプレートが人気。力一杯ハンマーを振り下ろして刻んでいく。
【右】イニシャルや言葉など6 ~ 12文字を刻印。鍛冶の文化を体験できる。


【左】ファクトリー内では焼きマシュマロやポップコーンを自分で作る「焚き火プラン」も。
【右】「santo」の設計は建築家・前田圭介氏。2025年、イタリア「デダロ・ミノッセ国際建築賞」で奨励賞を受賞した。雁行するガラスに仕切られた開放的な空間では鍛造の技術を活かしたオリジナルの家具や調理器具を展示・販売している。
伝統の鍛造技術と最新の技術、現代的なデザインを融合させて新たな価値を創造する取り組みはものづくりの可能性を広げ、地域の産業遺産として未来につないでいる。

santo
https://santo-fukuyama.com
撮影 吉澤健太
取材・文 齊藤素子
編集 川原田朝雄
<広島への翼>
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