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“風が主役”の建築――坂 茂が瀬戸内に描いた泊まれる美術館

“風が主役”の建築――坂 茂が瀬戸内に描いた泊まれる美術館

TRAVEL 2026.06 広島特集

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世界で最も美しい美術館にも選ばれたSIMOSE。その魅力は、建築の造形美だけではない。海辺を渡る風、刻々と表情を変える空、水盤に揺れる光――瀬戸内の自然そのものが、この場所では展示の一部になる。建築家・坂 茂が描いたのは、風景に滞在しながらアートを体感するという、新しい美術館のかたち。泊まることで初めて完成する体験が、ここにある。

海と山、そして風に向き合いながら……

平和と希望の象徴として世界に知られる広島。受け継がれてきた技術と高い美意識で作り出すさまざまな“用の美”、風土や景観に呼応した名建築、革新的デザインで魅了する伝統的工芸品など、ものづくりへの意識の高さも際立つ。

「“世界の定番”を目指して、100年使っても飽きのこないデザインと、堅牢さを兼ね備えた家具を作る」(マルニ木工)――優れたデザインは、私たちの五感に訴えかけながら、未来を創造する力となって希望へと導いてくれる。

エミール・ガレの作品に登場する花から抽出した8色のカラーガラスに覆われた下瀬美術館の可動展示室。造船技術を使い可動式とした展示室は瀬戸内海の島々から着想された。

空間の主役は山から海に通り抜ける風

プリツカー賞受賞の建築家が描く海辺の風景

〈森のヴィラ〉より「壁のない家」。1997年、軽井沢の傾斜地に建てられた別荘を宿泊施設として再設計したもの。瀬戸内海を眺めながら、まるで森の中に浮かぶような感覚で滞在する。

「SIMOSE」は、宮島はじめ瀬戸内の島々を眼前に望む海辺に広がる美術館、ヴィラ、レストランが一体となった複合施設。すべての施設の設計を手がけたのは建築家・坂 茂(ばん しげる)氏。何度も訪れたくなるさまざまな魅力を持つ施設だ。

季節ごとに変化する周囲の景色を映し出すミラーガラスで覆われた美術館と、水盤に佇む可動展示室は昼と夜でも違う表情を見せる。つまり、宿泊することで完結する、世界に類を見ない美術館というわけだ。

木立の間に点在する〈森のヴィラ〉の一棟、二枚の壁を十字に組み合わせた「十字壁の家」。坂 茂氏の恩師、ジョン・ヘイダックへのオマージュとしてデザイン。

ヴィラは水辺と森の異なるロケーションにそれぞれ5棟が点在。森のヴィラは坂 茂氏のケーススタディ・ハウスを再設計した4棟と新たに設計した1棟で構成。建築・デザインラバー垂涎(すいぜん)のヴィラだ。瀬戸内の自然に囲まれたアートの中でアートを観る、建築作品に泊まるという唯一無二の経験がかなう。

ミラーガラスに周囲の景色が映し出され、風景に溶け込み、増幅する美術館のエントランス棟。2024年のベルサイユ賞※で「世界で最も美しい美術館」に選出された。※国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部で創設された建築賞。

SIMOSE
SIMOSE ART MUSEUM / SIMOSE ART GARDEN VILLA

広島県大竹市晴海2-10-50
https://artsimose.jp

撮影 吉澤健太
取材・文 齊藤素子
編集 川原田朝雄

<広島への翼>
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