熊野筆とHIROSHIMAアームチェア──広島が磨き続ける“世界品質”
G7広島サミットで各国首脳が座った「HIROSHIMAアームチェア」、そしてハリウッドでも愛される熊野筆。広島で培われた工芸技術は、いま世界の日常へ静かに広がっている。木工と筆づくりに共通するのは、使う人の身体感覚に寄り添う設計思想。職人の感覚と精密な技術が融合した広島のものづくりは、“用の美”を世界基準へ進化させている。
広島ならではの「木づかい」で“用の美”が進化し続ける
アップル本社Apple Parkで愛用されている椅子
2023年5月に開催されたG7広島サミットは記憶に新しいところ。会議のワーキングランチで各国首脳が座っていた椅子が「HIROSHIMAアームチェア」。木肌の温もりを感じさせながら静かに佇む美しい椅子だ。

1928年、廿日市(はつかいち)で創業したマルニ木工は木製洋家具づくり一筋、木と向き合い木を知り尽くすメーカーで創業当初から掲げられているモットーが「工芸の工業化」ということ。
繊細な作業は手で行い、機械の力をうまく使いながら品質を安定させ、生産コストを下げる。相反する事柄のバランスは試行錯誤を重ねながら貫かれている。



デザイナー・深澤直人氏と共同で開発し、2008年に発表された「HIROSHIMA」は世界的なデザイン感覚と日本独特の木に対する美意識、精緻なものづくりの技が融合したプロダクト。
マルニ木工が蓄えてきた技術と哲学が結実し進化した“用の美”は広島から世界へ向けて発信されている。時を超えて定番として愛されるに違いない。

マルニ木工(本社工場)
https://www.maruni.com/jp/
デザインとは丁寧に整えるということ
ハリウッドでも愛されているブラシ
熊野筆は広島県安芸郡熊野町で農閑期の副業として始まり、本格化。1975年には県内で初めて国が指定する伝統的工芸品に認定された。

1980年設立の熊野筆メーカー「瑞穂」は、熊野筆の伝統技術を継承しながら海外市場の開拓と自社ブランドの開発に早くから注力していた。2015年に立ち上げた「SHAQUDA」はメイクとスキンケアの2ラインからなり、品質とデザイン性の高さで海外でも高い評価を得ている。

※PBT(ポリブチレンテレフタレート):腰が強く、肌あたりが柔らかい合成繊維。
ひとつの工程を熟練の職人が担当する分業体制と完全社内一貫体制だからこそ実現した自社ブランドだ。筆と同じ穂先を用いた熊野筆業界初のボディケアブラシ、49種類もの用途別に作られるメイクアップブラシなど、目的を明確にした緻密な設計で丁寧に作り出される筆は、デザインとしての多様性と奥深さを教えてくれる。


【左】軸や持ち手に金属を使用しないエシカルなメイクアップブラッシュ「UBU(ウヴ)」シリーズのベーシックな5本セット。ハンドルにはくるみオイル仕上げのブラックウォルナットを使用(スタンド付き¥55,990)。
【右】熊野町にはさまざまな筆のモチーフが。
熊野筆のデザインを支える技術

整毛・選毛
毛に丁寧にクシをかけ、均等に整える。

逆毛・すれ毛取り
半差し(小刀)を使い、指先の感覚で逆毛やすれ毛など肌触りの悪い毛を取り除く。


山出し→ 穂首・金具付け
コマと呼ばれる木の筒の中に毛を入れて、毛先を山型に整えて形状を作る。山出しした穂首の毛丈や形状を確認して金具に挿入。接着剤で固定した後に洗浄。十分に乾燥させて軸を取り付ける。


【左】右から、代表取締役社長・丸山長宏さん、取締役・丸山紗和子さん、取締役・マックニール裕子さん。
【右】工房に併設するアトリエショップ「SHAQUDA」。自社ブランド「SHAQUDA」の全商品が展示・販売されている。メイクアップやスキンケア体験もできる。
SHAQUDA(瑞穂)
https://shaquda.jp
撮影 吉澤健太
取材・文 齊藤素子
編集 川原田朝雄
<広島への翼>
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