出雲で気づいた感謝と祈り 日常はたくさんの“見えない縁”でできている
かみさまのこえをきく
仲間や家族と参道を歩き、祈り、願うことでセロトニン、オキシトシン、ドーパミンが促される――ウェルネスのスペシャリストが神社を巡り、心と体をひらく新しいあり方を探る新連載がスタート(初回は拡大版)。出雲大社で「縁」と「感謝」の本質に触れながら、その可能性をひもといていく。
SHINDO ――神社でひらく、心と体のウェルネス
SHINDOとは、「心・体・神」を一つにつなぎ、“今”に意識を向けて生きるための日本発のウェルネス。「心(Mind)の道・身(Body)の道・神(Spirit)の道」の意味を内包し、日本古来より続く“今この瞬間を生きる”という思想「中今(なかいま)」を軸に据える。
その土地の自然音や神社にまつわる音に身をゆだね、神々をイメージした神楽(かぐら)のような動きと呼吸を重ねることで、心が静まり、意識は自然とこの瞬間へと向かう。本連載では、このSHINDOの考え方をもとに神社を巡り、心と体がひらかれていく感覚をひもといていく。
出雲 はじまりの地で、「縁」を考え直す

朝のやわらかな光の中、参道をゆっくりと歩く。背の高い木々に包まれながら呼吸を整えていくと、それだけで体の内側が静かにゆるみ、ほどけていくのを感じる。
ここは出雲大社。縁結びの神様として知られる場所だが、その意味は思っているよりもずっと広い。境内を歩きながら、神職の沖津世育(ときやす)さんにこんなお話を伺った。
「縁というのは、男女の関係だけではありません。人と人、仕事、人生、あらゆるものとの結びつきです」
祀(まつ)られている大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)は、国をつくり、人々の営みを支えた神様。そして国譲りののち、目に見えない世界――神々や魂、そして縁そのものを司る存在になったという。
年に一度、全国の神々がここに集まり、さまざまな縁について話し合う。そうした話に触れて、「縁結び」という言葉の捉え方が大きく変わった。


上宮(かみのみや)
※旧暦の10月11日〜17日の7日間

下宮(しものみや)

神魂伊能知奴志神社(命主社)
かみむすびいのちぬしのかみのやしろ(いのちぬしのやしろ)
もう一つ、強く印象に残っている言葉がある。
「お願い事の前に、まず感謝を伝えることです」 当たり前に過ごしている日常も、決して当たり前ではない。今日という一日を迎えられていること自体がご縁の積み重ねの上にあるものだという。
「普段挨拶もしない人に、いきなりお願いされても困りますよね。神様も同じです」 その言葉に、私はこれまでどれだけ感謝を先に伝えられていただろうか、とハッとさせられた。

さらにこんな話もあった。
目に見えない世界というのは、特別なものではない。たとえば、毎日口にする一杯のご飯。その背景には、見えないところで多くの人の手や時間が重なっている。そうしたものが「目に見えない世界」なのだと。
この体験は、心と体がひらかれていく時間でもあった。長年ウェルネスの分野で仕事をしてきた私にとって、神社参拝には“三大ホルモン”の分泌が促され、心身のウェルネスへとつながる本質があると感じている。
参道を歩き、光を浴びることでセロトニンの分泌が促され、思考が整理される。人とともに過ごすことでオキシトシンが高まり、安心感が生まれる。そして願いを言葉にすることでドーパミンが活性化し、自分の内なる意思が輪郭を帯びてくる。
この連載で伝えたい「SHINDO」は、心・体・神をつなぐひとつの道だが、その入り口はとてもシンプルだ。「今、この瞬間に意識を向けること」。神社参拝は現代の生活の中でこぼれ落ちがちな感受性を、もう一度呼び覚ます。
出雲大社
島根県出雲市大社町杵築東195
米子鬼太郎空港(米子空港)から出雲大社へは車で約80分。途中、松江城や塩見縄手(しおみなわて)、宍道湖(しんじこ)の風景を楽しみ、縁結びで知られる八重垣神社を巡ると、小泉八雲と妻セツを描いた連続テレビ小説『ばけばけ』の世界観も感じられる。
出雲大社へ向かう前に、海へ足を延ばした。神々を迎える場所とされる稲佐の浜。波の音だけが響く浜辺に立つと、余計な力が抜け、感覚がゆっくりと解き放たれていく。
そして、目に見えないものを「信じる」というよりも、「感じようとする」ことの大切さに気づく。出雲での体験は、心身をゆるやかに癒やし、本来の自分へと立ち返る感覚を思い出させてくれた。
とちのこえをきくーー稲佐の浜
とちのものをいただくーー神塩

出雲かみしお
稲佐の浜の海水を汲み上げ、約300時間かけて独自の製法で炊き上げた「神塩」。「毎朝、天然の海塩をひとつまみ入れた水を飲むのが習慣。ミネラルを補給しながら、体を内側から清めるイメージを重ねることで、日常のコンディションを整えます」(竹下)
竹下雄真(たけした・ゆうま)
写真 宮澤正明
案内人 竹下雄真
音楽 黑瀧節也
編集 服部広子
協力 渡部 稔(有限会社出雲観光タクシー)
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