コンビニと日本食が恋しい 国枝慎吾が海外生活で実感した日本の快適ライフ
※ この記事は、翼の王国2025年8月号に掲載されたものです。
海外生活が長くなると、生まれ育った国の良さに改めて気がついたり、懐かしく思ったりする人も少なくないと思います。かく言う私も、オーランドに暮らし始めて1年8カ月。ときおり日本が、無性に恋しくなることがあります。

まずは、やっぱり食事です。こちらで同僚たちと「ランチに行こう」という場合。オーランドのレストランも、決してまずくはありません。いや、おいしいです。おいしいのですが……、メニューは決まってハンバーガーかサンドイッチ、フライドチキンかメキシカンフード、もう、ほぼほぼこれだけなんです(苦笑)。



日本のように、多種多様なお店のなかからチョイスするということができない。「今日もハンバーガーか」と、小さくため息をつきながら「たまにはお蕎麦やラーメン、丼物や定食が食べたい!」と切に思ってしまうのです。先日、一時帰国したときも真っ先に、ラーメン店に駆け込んでしまいました(笑)。
恋しく思うのはコンビニエンスストアも。離れてみてその便利さを、実感しています。なにか欲しいものがあったとき、時間を選ばず大概のものが手に入る。コーヒーもホットスナックも、もちろんおにぎりもすごくおいしい――。なぜ、ここオーランドにコンビニがないんだろうかと、恨めしくすら思う毎日です。
また、こちらでクルマを運転していると、日本の道路事情が懐かしく思い返されてしかたありません。フロリダでは、ウインカーを出さずに交差点を曲がる人や、高速道路で左に右に縫うように車線変更を繰り返し、猛スピードで私を追い抜いていく、そんなドライバーが、少なからずいます。運転中、ヒヤリとさせられるたびに、日本のドライバーの運転マナーの素晴らしさを思い返すのです。
帰国した際、家族で近場の温泉旅館に宿泊する機会に恵まれました。「これもアメリカにはないよな」と呟きつつ、日本の露天風呂を堪能した次第です。

なんだか、日本のいいところ=アメリカのダメなところばかりを綴ってしまいましたが、帰国して日本に何日か滞在していると、今度は無性にフロリダに戻りたくなるのです。理由は空。いまや、オーランドの青くて広い空と、燦々と輝く太陽は、私の精神衛生上、欠かすことのできないものになったようです。
写真・文 国枝慎吾
脊髄腫瘍のため9歳から車いす生活となり、11歳で車いすテニスと出会う。四大大会とパラリンピックを制覇する「生涯ゴールデンスラム」を達成。23年1月、世界ランキング1位のまま引退。
2016年よりスポンサーシップ契約を結んでいるANAは国枝さんの新しい挑戦をさらに応援し続けます。
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