半蔵門のプーリア料理 何度も通いたくなるのは、想像を超える“驚き”があるから
濃厚なのに重くない。半蔵門「Casa Bianca」の料理を食べたあと、私の頭に残ったのはそんな不思議な感覚だった。和牛ラグーの深い旨みから、私は当然バターを想像した。けれど答えは、プーリア州のオリーブオイル文化。知っているつもりだったイタリア料理が、ここでは少し違う。その小さな裏切りが忘れられず、私は何度も足を運んでいる。
おいしいものに目がない私のアンテナが最近“感知”したのが、東京・半蔵門の閑静な住宅街にたたずむ「Casa Bianca」。南イタリア・プーリア州の郷土料理をベースとしたお店です。
前菜、パスタ、メイン、デザートを、それぞれ一品ずつ選ぶプリフィクスコースでいただきましたが、そこはある意味、私も食べ慣れているイタリアン。「見たこともない、今日初めて食べる」といったメニューというのはありません。ですが……、馴染みあるはずの一皿一皿が、どれもこちらの想像の上をいくんです。
パスタはもちろんのこと、南イタリア伝統の小魚と唐辛子のペースト「ロザマリーナ」など、ほとんどの調味料も自家製です。
なかでも、私がもっとも「やられた」と舌を巻いたのがラグーソース。こちらも自家製で食感抜群、プーリア州の伝統的な生パスタ「サーニェンカンヌラーテ」が、じっくり煮込んで和牛の旨みが凝縮されたラグーソースで供されるのですが……。ソースに得も言われぬ深いコクを覚えた私、付け焼き刃の知識を絞り出し「バターはどちらの?」という質問をぶつけてみたところ、シェフは少々申し訳なさそうに教えてくれました、「バターは一切、使っていないんです」と。
聞けば、プーリア州はオリーブオイルの一大産地で、そちらをふんだんに使うことで味に十二分の深みが加わるのだそう。たしかに、お腹いっぱいいただいたのに、食後感はさっぱり爽快です。
なんだか、恥ずかしいやら悔しいやらで、初訪問から2週間ほどで3度も食べに通った私。行くたびに「やられた」と連呼していました。
今月の花は、次の「やられた」を探し求める私自身のアンテナ、そんなイメージなのです。

赤井勝(あかい・まさる)
装花・文 赤井勝
編集 仲本剛