南青山『鮨龍次郎』で感じた逆説的な魅力 “王道なのに新しい”はなぜ生まれるのか?
名店ほど肩肘張るもの、という先入観を軽やかに裏切る店がある。昭和を思わせる威勢のいい迎え声と、現代的に研ぎ澄まされた握り。そのギャップが、体験そのものを鮮烈にする。王道を貫くことが、結果として最も新しい──そんな逆説を教えてくれる一軒だ。
個人的見解ですが昨今、静謐(せいひつ)な空気に包まれている寿司店が増えたように思います。
それも“予約が取れない” “レストランガイドの星付き”といった少々格式の高い店であればあるほど、その印象は濃くなります。来店した客に「どうも」と小さく会釈をした板前さんが、「どうぞ、こちらに」と厳かにカウンター席を指し示す、といった具合です。
ですが、私が最近通う東京・南青山の『鮨龍次郎』は違います。けっこうな人気店なのに、入口の扉を開けた瞬間、大将が「いらっしゃいー!」「まいど!」と店の外にまで響き渡るような大声で迎えてくれる。昭和の寿司店には当たり前にあった威勢のよさで、私などは「一周回って、逆に新鮮や」と感じ入り、その“王道”と“斬新”が同居するさまに「やられた」と呟(つぶや)きたくなります。
基本的には“おまかせ”で握ってもらいますが、そこは令和の人気店、こだわりの握りはどれも洗練されていて、文句のつけようがありません。最後だけ、私は決まってかっぱ巻きと干瓢(かんぴょう)巻きを注文。ここのかっぱ巻きは少し斬新で、極細の千切りきゅうりの束を、ほんの数ミリ、極薄のシャリと海苔(のり)で巻いたもの。繊細な細工で清涼感が際立つイメージ。
そして、締めは干瓢巻き。甘めに煮た干瓢とシャリの合間に、これでもかとワサビが挟まれていて……、鼻にツンときて思わず落涙、ここでまた「やられた」と呟くのです。
今月の花、メインはミニカトレアです。オーソドックスな花材を、いかに新鮮に見ていただけるかを意識しました。
話はもう一度、寿司店に。会計を済ませ店を後にすると、やっぱり外まで聞こえてきます。大将の元気いっぱいの「ありがとうございましたー!」が。

赤井勝(あかい・まさる)
65年、大阪府生まれ。花を通じ心を伝える自らを「花人」と称し、自身の飾る花を「装花」と呼ぶ。08 年、北海道洞爺湖サミット会場を花で飾り、13 年、伊勢神宮式年遷宮では献花を奉納。24 年、大阪府堺市に「Akai Masaru Art Museum」をオープン。
装花・文 赤井勝
編集 仲本剛
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