和食の名店であえて真冬にかき氷──日本料理「くろぎ」で出会った酒粕のやさしい甘さ
名店の割烹料理の余韻を締めくくるのは、意外にもかき氷だった。ふわりと崩れる淡雪の氷に、白いムース状のクリーム。ひと口食べた瞬間、上品でやわらかな甘さが広がる。その味の秘密は、銘酒の酒粕。料理と酒の世界で語られる“ペアリング”という言葉の意味を、甘味というかたちで静かに理解した夜だった。
今回は日本料理の「くろぎ」について書きたいと思います。
言わずと知れた日本料理の名店。私はこれまで数回、お邪魔しては“日本最高峰の割烹”と称された、新橋「京味(きょうあじ)」などで修業された店主が紡ぎ出す、素材の個性を存分に生かした和の逸品の数々を楽しませていただきました。ですが、今回はメインの料理ではなく、最後に供される甘味を紹介したいのです。
その日、私はいくつかあるデザートのなかから、かき氷を選びました。これがまた、絶品なのです。私が子どものころから食べてきたものとはまるで違って、フワフワとした淡雪のような氷に、白いムース状のクリームが載っています。ひと口、食すと得も言われぬ上品な、ほんのりとした甘さが口のなかいっぱいに広がりました。
聞けば、その淡い甘みの正体は酒粕(さけかす)。それも、アルコールを飲まない私でもその名を知っている銘酒の酒粕だというのです。左党の人が楽しまれている料理と酒のペアリングとはこういうものかと、妙に納得できました。
そしてこの日、こちらでいただいたすべての料理の味が、上品なかき氷の甘みと相まって、美しく伏線回収されていくような、そんな幸せな心地になったのです。
じつは、そのかき氷をいただいたのは1月のこと。そう、天邪鬼(あまのじゃく)な私はあえて真冬に氷菓を選んだのです。最初は、さすがに寒い冬の夜にこれはミスチョイスだったか、と思って食べ始めたのに……、気付けばあまりのおいしさに一気に完食してしまったのでした。
今月の花は、漆の花器に梅の苔朴(こけぼく)という和テイストの世界に、キュートなポピーを飾りました。和食の名店で、真冬に際立つかき氷のように。

赤井勝(あかい・まさる)
65年、大阪府生まれ。花を通じ心を伝える自らを「花人」と称し、自身の飾る花を「装花」と呼ぶ。08 年、北海道洞爺湖サミット会場を花で飾り、13 年、伊勢神宮式年遷宮では献花を奉納。24 年、大阪府堺市に「Akai Masaru Art Museum」をオープン。
装花・文 赤井勝
編集 仲本剛
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