SNSでつながる時代に「会う」価値 会いたい人には飛行機に乗って…
普段からSNSで、美味しいものを食べたとか、旅行をしたとか他愛もない友人の投稿に「いいね!」を付けて、しょっちゅうコミュニケーションをとっているから、毎日直接会っているかのような錯覚を起こしてしまい、実際は何年、何十年も会っていないという人間関係が多くなってきた。会おうと思いさえすれば、いつだって会えるから〜なんて気分でいると、この世では会えない可能性が高まっているような気がしてきた。

1枚85円になってしまった年賀はがきの儀礼的な挨拶より、ネット上でお互いの近況を語り合ったり、写真を送り合ったりする時代に大きく変化した。筆まめとまでは言わないが、葉書や手紙を書いて出すのが小さい頃から好きだった。親戚や友人に向けての年賀状、暑中見舞いはもちろん、恩師や大事な人の誕生日や記念日には、一筆書いて送りつけている。
機内でCAさんから頂ける絵葉書も重宝している。私の場合、頂いてから何年も机の引き出しの中で“熟成”、写真の機種が退役した後に、小学生以来収集を続けてきた記念切手のビンテージコレクションを組み合わせて貼って出す。自分のデザイン的な嗜好の押し売りをしている気はするものの、受け取った方がにんまりするよう思いを込めて投函している。投函する場所も、記念の風景印を押してくれる郵便局や、最果ての地のポストだったり、あれこれこだわっていることが多い。
本来、他人との通信手段であるはずの郵便を自分宛に出すこともある。海外へ渡航した際、機内でもらった飛行機の絵葉書に、到着後自らの無事をつづ綴って投函。遺書でこそないものの、異国の地で万が一最期を遂げてしまったらという思いで、辞世の句まがいの短文をしたためることもある。帰国後、何日も遅れて到着した自分で書いた葉書を見返して、思わず笑ってしまうのだが、安全渡航のおまじないだと自らに言い聞かせ、今も継続中。

ANA推しの仲間とは、結構な頻度で情報交換と近況報告を兼ねた会を開いている。会場は、高級ホテルの宴会場や予約が取れない三つ星レストランの個室ではなく、私の自宅にほど近い、荻窪駅西口の餃子の全国チェーン店。朝一番のSNSで私の呼びかけに反応した方が、全国各地からANAに乗ってやってくる。目的は、全員共通の旬なANAの話題と“にんにく激増し両面よく焼き油多め”餃子の過剰摂取だ。名古屋から鉄道ではなく、福岡や那覇経由で羽田に来られた方、この連載をひと月遅れで機内エンターテインメント“オーディオブック”のCAさんの朗読で楽しんでいる視覚障がい者の方もいる。毎回、遠路お集まり頂きありがとうございます。
新しい出会いも大切だが、会いたい人には、遠くても近くても!ANAに乗ってリアルに会いに行くことを心がけている。
〜つづく
パラダイス 山元 | ぱらだいす やまもと
プロ搭乗客。 ANA ミリオンマイラー。音楽家。餃子レストラン「荻窪餃子 蔓餃苑」オーナーシェフ。著書に『読む餃子』、英語版・フランス語版餃子レシピ本『GYOZA』、『パラダイス山元の飛行機の乗り方』『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』などがある。全国各地で開催中の「皮からつくる本気の餃子づくり教室」などの出演イベントの詳細は X(旧Twitter) で発信中。
X @mambon

イラストレーション ソリマチアキラ
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