カーデザイナー時代からの夢…遂に叶うイタリア渡航【ANAミラノ就航】
貯めたマイルを特典航空券に換えて旅行をしたと思ったらスグにまた同じ飛行機に乗って帰ってきたとか、機内や空港内で目や鼻に留まった些細(ささい)なことを綴(つづ)っているだけの“ただのエッセイスト”だと、私のことを思ってくれていたならそれはそれで嬉しいのだが、前職は自動車会社勤務のカーデザイナーだった。
子どもの頃、大ブームが起こったスーパーカー消しゴムを収集する趣味とかはなかったものの、将来はクルマのスタイリングに関わる仕事がしたいと、美大を目指した。図書館で、デザイン関連の洋書やクルマ雑誌を読み漁(あさ)り、いつかは自分が描いたクルマが公道を走ったりしたならなんと嬉しいことだろう!と未来を思い浮かべていた。
当時は携帯のカメラを外国語のテキストにかざすだけで翻訳してくれるなどという便利なアプリどころか、そもそも携帯電話すら存在していなかったので辞書を片手に少しでも書いてあるのか理解しようと必死だった。日本語↔英語ならまだしも、イタリア語ともなるとかなり難儀した。周りにイタリア人の友人は皆無、その憧れから増幅するイタリアのイメージで頭の中はパンパンになり、とくに工業デザインの聖地ミラノにはなんとしても早いうちに行かねばならないと思った。
結局、大学生活4年間は部活動や就職活動に時間を取られ、学生のうちにイタリアへ渡航することは叶わなかった。自動車会社に就職さえできたら、イタリアやドイツ、アメリカで開催されるモーターショーに出張させてもらえる身分になるだろうという考えも甘かった。海外出張の機会なんて、新入社員の私に巡ってくることはなかった。
会社創業以来の大ヒットとなったツーリングワゴンのグラフィックデザイン、カラーリングに携わり、その後のスポーツセダンのスタイリング開発では、映画でおなじ馴染みの名車「デロリアン」のデザイナー、インダストリアルデザイン界の巨匠、イタリアのジウジアーロ氏と一緒に仕事をする機会に恵まれた。頭の中に描いていた夢が実現する奇跡を体験してしまうと、また次の夢を追い求めたくなり、自動車会社勤務と並行して趣味で続けていた音楽活動に主軸を移し、レコード、CDデビューする夢も叶えることができた。
そして今は、大好きな飛行機に乗りまくって、マイルやステイタスポイント、ライフタイムマイルを貯めることに生きがいを感じる日々。自分はこれまでなんて幸せな人生を送ってきたのだろう。とここまで綴ってきてハッとした。そういえば、あんなに憧れていたミラノに、まだ行ってなかったじゃないか!
12月3日、ANA 羽田ーミラノ線の新規就航が決まった。今度こそミラノに、しかもANAの直行便で行くことができるなんて。先ずは、初便タッチかな?
〜つづく
パラダイス 山元 | ぱらだいす やまもと
プロ搭乗客。 ANA ミリオンマイラー。音楽家。餃子レストラン「荻窪餃子 蔓餃苑」オーナーシェフ。著書に『読む餃子』、英語版・フランス語版餃子レシピ本『GYOZA』、『パラダイス山元の飛行機の乗り方』『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』などがある。全国各地で開催中の「皮からつくる本気の餃子づくり教室」などの出演イベントの詳細は X(旧Twitter) で発信中。
X @mambon