山岳少数民族のお母さんが作るご馳走〜タイ リアルローカルに触れる2
タイ北部、ミャンマー国境手前の山間部に暮らすラフ民族の村。彼らはチベット族ともいわれ、ビルマ北部、チベットなどに分散。この地域には約60軒、200人がサトウキビ、山米、とうもろこしなどの農作物を育てながら、ほぼ自給自足で暮らしている。村が観光客を迎え入れ、CBT(コミュニティベースド・ツーリズム)を始めたのは数年前。それ以降、村に現金収入が入るようになり「人々の生活も上向いてきている」。そう話すのは、今回お世話になったナコーさん。とはいえ「観光客を迎えるのは生活の一部。生活を支えるためのもので、本業はあくまで農業」。
ナコーさんは我々のために晩御飯を作ってくれた。山間の村とはいえ、電気はあるし、プロパンのガスもある。だけどナコーさんはそれらを使って料理をしない。スイッチを入れれば火が点く便利さには興味がないのだろうか(それとも使い方をよく知らないのか)?
「こうやって薪で作るほうが料理が美味しくなるから。ガスもあるけど美味しくないから使わない。料理は便利さよりも美味しさが大切でしょ。それに決して面倒だとは思わない。子供の頃からやっていることだし、今さらそれを変える必要も無い」と、その答えは明快。便利さへの迷いなど一ミリもないのだ。
「私の料理、美味しいかなぁ?」。そう心配しながら作ってくれたお母さんの料理への愛と、突然やってきた我々への気持が嬉しい。
「おいしくなくても食べなくちゃなりませんよ。これしかないんだからね」。そう言いながら作ってくれたその日の料理は、じゃがいもカレーのスープ、卵焼き、辛子味噌、かぼちゃの炒めもの、山米・・・。全て山で採れたもので作ったお母さんの料理はもちろん「アロイ!(美味しい)」に決まっているのだ。
取材・文・写真:山下マヌー