“遠くまで見渡せる景色”がつくった幻想世界 ペテル・ウフナールが語る故郷
中欧の要衝として、さまざまな文化の影響が重なり合ってきた歴史を持つスロバキア。日本からの直行便が発着するウィーンからわずか1時間程度で足を延ばせる好立地にありながら、この国には素朴で端正な街並みと、澄んだ空や大地がどこまでも広がっている。この国の美しい風景の中で生まれ育ち、幻想的な作品世界を描きつづけるアーティストであるペテル・ウフナールさんの創作の原点を探った。
記憶と創造を交差させ描く、圧巻の風景

芸術表現のみならず、民芸などの風俗においても“絵本”と親和性の高い環境が培われてきたスロバキア。そこで、この地で生まれ育ちグローバルに活躍するアーティストの創作の根源について探るべく、ペテル・ウフナールさんのアトリエを訪ねた。
ペテルさんは同国東部の国境近くにある、ソブランツェという町の出身。幼少期から彫刻や絵画を好み、芸術系の高校で歴史的絵画の修復技術などを学んだのち、ブラチスラバ美術大学へ進学した。教授の勧めで版画科へ在籍することになったという彼は、キャンバスに広げた絵の具を自作の道具で削り取るようにしてモチーフを浮かびあがらせる手法を取ることも。そうして描かれる作品は、鑑賞する者を夢の中へ惹き込むかのごとく、幻想的な雰囲気を放つ。
「小さな頃からSFの本が好きだったので、ファンタジックな作風はそこから来ているのかなと思います。ただ“幼い時分に見ていた景色がアーティストに影響する”という考え方は確かにあるので、私が生まれ育った故郷の姿も少なからず関係しているのかもしれませんね。広大な平地が続き、遠くまで見渡せる──そんな風景の中で育ちました」

大学の頃、当時留学生だった日本人絵本作家の降矢(ふりや)ななさんと同じ学科で出会い、結婚。それを機に26歳で果たした来日が、初めてヨーロッパを離れる機会となったそうだ。スロバキアの魅力はどこにあると思うか問うと「小さな町や村々に、大都市では感じられない昔ながらの建築や習慣が残っているところ」という答えが返ってきた。時空や宇宙を超越する空想を掻き立てる夢幻の気配が、この国の景観には宿っている。

大学卒業後に手掛けた絵本で初作にしてBIB(ブラチスラバ世界絵本原画展)の「金のりんご賞」に輝いたペテルさん。数々の絵本挿画や切手デザインなどを担当し、受賞歴も多数。「最近は毎日愛犬や妻、娘と散歩する水辺の風景がお気に入り」
Peter Uchnár
写真 伊達直人
コーディネーション ヴィツィアン邦子
取材・文・編集 山下美咲
<スロバキアへの翼>
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