リゾートが支える島の環境と暮らし〜幽玄の入り口El Nido-3
エルニドへのゲートウェイ、パラワン島。この島が観光客に注目されるようになったのは約10年前。「世界一美しいビーチ」としてアメリカ旅行雑誌に選出されてから。それ以降多くの旅人に知られるようになり、州都のプエルトプリンセサには観光客を受け入れる安宿が次々誕生し、彼らを受け入れるクラブやバー、お土産屋も出現するとともに、島は発展した。
しかしここは「世界一のビーチ」。世界一を過ごすのにふさわしい場所として、リゾート(Seda Lio:https://www.sedahotels.com/hotel/view/11/seda-lio)が繁華街から遠く離れた、静かな島の北部の海沿いに誕生。
ここはエルニドリゾーツのグループ会社が経営していて、周辺の海域の保護と維持という彼らの目的と役割も当然果たしているという。
それまで何もなかった場所に突然リゾートが出現すると、リゾートに宿泊する客を目当てに、周辺には小判鮫商法的な店が出現、数年後にはそれまで静かだったエリアが「町」へと姿を変える。彼らはそうなることを避けるため、リゾートの敷地周辺の海岸を管理・整備するとともに、ウミガメの保護やファームでの野菜栽培、女性や漁師のサポートなどグループの他のリゾートと連動し、周辺の生き物と海の環境を守りながら、島民の暮らしをサポートする。
リゾートで使うアメニティ、お土産などを島の女性たちに依頼、支援することで、自立と暮らしを助ける。アメニティの多くがブリで作られている。「どこにでも生えていて、ほら、こんなに簡単に避けて加工も楽」と見せてくれた。
リゾートのアクティビティに使う船は地元漁師の船。釣りのガイドは漁師。リゾートで全てを独占するのではなく、島の人々との共存を図っている。因みに釣りに網は使用しない。糸を垂らして一本釣りという昔ながらのスタイル。理由?「必要以上に捕らないため」。
お金をばらまくのではなく、島の暮らしとスタイルを守ることで観光客が増え、島と人々を豊かにする。この一見、相反することがここではちゃんと成立しているという事実。それは、他の場所であっても運営する人々と関わる人々の意識次第で可能だということを教えてくれている。
写真・文:山下マヌー