マニラへの誤解と今起きつつあること〜幽玄の入り口El Nido-5
「マニラ」という都市にどのようなイメージをお持ちだろうか?自分はといえば、昼も夜もちょっと危険な(怪しい)匂いがすると共に、スモーキーマウンテンに代表される貧困の問題を抱えている国というイメージ。長年この国のその手のニュースや画像が流れてくるのを見せられ、イメージというより固定観念に近いものを持っていた。
実際、最後に行ったマニラではジープニー乗車中に怪しい言葉で近寄ってこられたり、セブ島のカジノ入り口には“ローレックスマーダー”と呼ばれる強盗たちが存在していた。
今回久しぶりに来たマニラ。かつて混沌だけの世界が展開されていたマニラとは、異なる世界が広がりつつあることを実感させられる。
中心部には真新しい高層ビルやタワーマンションが林立。古い街が壊されそこに今までとは全く異なる風景の町が出現。一億円を超える部屋をスタートアップで成功した現地の若者たちが部屋を購入し、世界中のハイブランドが並ぶ巨大モールで買い物をする。路地裏には隠れ家的なレストランも増えている。まだ一部とはいえ、事実、それが現在のマニラの姿でもあるのだ。
若者といえば、フィリピンの平均年齢は26歳前後だという。国の人口は1億人で、日本とほぼ同じ。つまりかつて日本が体験した、高度成長時代と同じ状況にあるということ(正しくは日本の高度成長期の平均年齢は30歳代)。
つまりこの先この国は、限りなく伸び代があるということ。しかも都市部に暮らす人の多くが英語スピーカー。SNSの発達により、日本と比べて圧倒的に世界へのアプローチが早いし、容易。フィリピンから世界へと発信し、ビジネスへと繋げてくという構図が完成しつつある。
フィリピンの人々は世界各地で働いていて、その数はフィリピンの人口の約10%。およそ900万人が働き、彼らからの送金がこの国のGDPの10%を占めている。これまで海外からの送金(つまり輸入)に彼らを頼っていた動きが、逆回転をし始めているという話を聞いた。つまりフィリピンの若者たちが作り出す新たなファッションや料理、モノやコトを世界各地に点在する900万人のネットワークを使いリアルに発信、販売、拡散という流れが始まっている。
この国で起きているそんなダイナミックな動きを目をキラキラ輝かせて話してくれる若者の瞳に、素晴らしい将来が待ち受けていると確信した、そんな今回のマニラ滞在。
とはいえ、まだアジアの混沌の風景も残っている。
自分にとってはこちらのほうが断然居心地がいいんだけどね。
取材・文:山下マヌー