バリの一流リゾートでも採用 竹建築の新たな可能性
豊かな自然に恵まれた“神々の島”として多くの旅人を惹きつけてきたインドネシアのバリ島が今、さらなる飛躍を遂げている。世界水準の新たな文化や美意識を形成するのは、楽園を求めここへ導かれた人々。地球の未来をも見据えた有機的な生き方が、そこにはあるのだ。環境に優しい竹を用いた建築は、世界水準のサービスを提供する一流リゾートでも採用されている。ここに見られるバンブーアーキテクチャーと、そこから伺えるバリ島の魅力の真骨頂を探った。
海辺のステイを彩る、無作為の美


通に人気のサーフスポットとして知られるチャングーエリア。ビーチ直結にもかかわらず喧騒から離れた上質な滞在を約束する「コモ ウマ チャングー」は、ウェルネスに特化したシンガポール資本のラグジュアリーホテルだ。すっきりと落ち着きのある都会的なインテリアを基調とし、随所にミニマルなエレガンスが漂う。

ローカルの食材をふんだんに取り入れた「コモ ビーチ クラブ」の中央には、イタリア人建築家のパオラ・ナヴォーネと、バリの竹建築シーンを牽引する「イブク」の協業によるバーカウンターが。有機的な存在感で心を和ませてくれる。

COMO Uma Canggu
Jalan Pantai Batu Mejan, Echo Beach, Canggu, Bali
敷地内の光景を印象づける粋なシンボル

山間部のウブドでジャングルに抱かれ、贅を極めたプライベートな逗留が叶う「マンダパ・リッツ・カールトン・リザーブ」。中央に鎮座する「マンダパ キャンプ」の壮麗な建築は、キッズ向けのプログラムを提供するという本来の目的を超え、大人もつい立ち寄る名所へ。総支配人を務める細谷さんが竹素材に感じるのは「後付け感なくこの空間になじむ調和のムード」だという。「見えぬバランスがエネルギーを発し、ここへ身を置く快感につながっています」
「リッツ・カールトン・リザーブ」は現在世界に8つしかない、リッツ・カールトンの最高級ライン。細谷さんは2006年から現在までリッツ・カールトンで20年以上の経歴を持ち、2020年の「ザ・リッツ・カールトン・日光」の立ち上げを総支配人として見届けたのち、2022年に現職へ抜擢され着任した。そんな一流リゾートを束ねる立場として細谷さんが重視しているのは、圧倒的な自然とそのパワーを宿したウブドの環境と、このリゾートが放つ一体感なのだという。なんと総支配人自ら、リゾートの植栽の監修もおこなっているというから驚きだ。

「なんでもきれいに整えてしまうのは簡単ですが、少し自然まかせにしてみるなど、この場所だからこそ実現できる自然とのつながりの感覚を大事にしています。10年前、エコの話をするのはまだ真新しいことでしたが、今ではそれが世界で強く求められるように。当リゾートでもサステナブルであることを実践していますが、やるからには美しいものを、そしてウブドの自然になじむものをと考え、このキッズキャンプを維持していますね。牛や鶏などの動物との触れ合いや、建物を取り巻く田んぼでの米づくりなどもプログラムに取り入れ、子どもたちが遊ぶだけでなく学べる場にもなるように演出しているんです」
よりローカルに根ざし、文化や自然、食に加えて“人との触れ合い”を楽しんでもらえるようなサービスを目指しているというマンダパ・リッツ・カールトン・リザーブ。そうしたコンセプトの中で、ワールドクラスのホスピタリティを支えるここバリ島ならではの性質とはなんだと思うか、細谷さんに聞いてみた。「バリ島には、善行がよい結果を、また反対に悪行が悲しい結果をもたらすというカルマの文化が根づいています。周りの人のことをよく考え誠実に対応する姿勢が定着しており、サービス精神旺盛で自然なおもてなしを可能にしていると感じますね。そのように豊かな自然と共存してきたバリの人々の穏やかさ、朗らかさこそが、バリ島らしさであり、この島を突出した存在にしている要素。ここにしかない文化や人々の親しみ、柔らかさは、旅の時間を温かみのあるものにしてくれるはず」

Mandapa, a Ritz-Carlton Reserve
Jalan Raya Kedewatan, Banjar, Kedewatan, Ubud, Gianyar, Bali
バリ島への翼
ANAとガルーダ・インドネシア航空のコードシェア直行便で成田国際空港(NRT)からバリ・デンパサール国際空港(DPS)まで約7時間55分。帰国便は同様の経路で約7時間10分。バリ・デンパサール国際空港(DPS)から海沿いの市街地エリアまでは車で約15分~1時間、ウブドまでは車で1時間半程度。
写真 レシールマグズ
取材・文・編集 山下美咲