メニューは珈琲のみ!一滴一滴こだわりが宿る尊い珈琲店~水の都 庄内vol.4
山に囲まれ日本海に面した、山形県「庄内」地域。出羽山地の向こうには内陸(山形市)、鳥海山(ちょうかいさん)の向こうには秋田県、朝日山地の向こうには新潟県が広がっている。日本海にも面しており、最上川、赤川など多くの川が流れるその肥沃な土地は、山々に守られながら安穏が保たれてきた。その土地で食を育み、扱う人たちに話を伺うと誰もが「山によって台風からも免れ、水に困らない土地だからこそ食材の宝庫」と幸せそうに話す。安穏の地に広がる水田には空、雲、山並みが映りキラキラと輝いている。
珈琲「もか」マスター標さんの珈琲を受け継ぎ、伝えていくという使命
HPを持たず店の電話だけで営業しながらも珈琲好きたちが足繁く通う店がある。店主の門脇祐希さんが30年前に鶴岡駅前に構えた「コフィア」。彼は東京・吉祥寺にあった名店「もか」のマスター標(しめぎ)さんから学んだ一人。
「11年働いた『もか』ではボスである標と出会い、日々いい豆と珈琲に接することができて幸せでした。頼まれてもいないのですが、ボスの珈琲を伝えることが使命だと自分の店を続けてきました。地元鶴岡に戻り、一人でお店をやると覚悟した時、お客さんが珈琲のために待つのは当たり前だと納得してもらえるような店にしようと決めました。それからというもの、標の珈琲を伝えられるよう一杯ごとに丁寧にネルドリップと向き合っています」
実際に珈琲を淹れてもらうと彼の集中力は凄まじいものだった。
「粉に湯がまわりきると最初の数滴が落ち、抽出の良し悪しが決まる。珈琲のエキスを抽出することが大切。最後まで細かい泡が出ている珈琲をお客様に」
珈琲を淹れた後、彼は受け継いだこだわりを話してくれた。
門脇さんの珈琲の淹れ方を見ていると息を飲む。まるで体が天井から糸で吊るされているかのように、細く細く慎重に湯を注いでいく。ポットを持つ手指は長年の仕事により、その形に沿って変形し、門脇さんの熟練の技を物語る。
毎週火~木曜日は店休だが、門脇さんは焙煎機と向き合う。若い頃は今よりも休みを少なくし、毎日営業後に深夜まで焙煎をしていたことも。全国に発送される、焙煎したての豆は香りが段違い!SNS広告などは一切なく、電話受付のみでもリピーターが途絶えることがない。
コフィア
山形県鶴岡市錦町13-11
TEL:0235-22-8778
10:00〜20:30
休/火曜・水曜・木曜
門脇さん自身が焙煎した豆は通販可能(受付は電話のみ)
撮影:関めぐみ
取材&文:桃本梨恵(Lita)
取材コーディネート協力:鈴木伸夫・有路理永
編集:中野桜子