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なつかしさについつい長居を…レトロ喫茶と酒場をめぐる~水の都 庄内vol.5

なつかしさについつい長居を…レトロ喫茶と酒場をめぐる~水の都 庄内vol.5

TRAVEL 2023.07 庄内特集

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山に囲まれ日本海に面した、山形県「庄内」地域。出羽山地の向こうには内陸(山形市)、鳥海山(ちょうかいさん)の向こうには秋田県、朝日山地の向こうには新潟県が広がっている。日本海にも面しており、最上川、赤川など多くの川が流れるその肥沃な土地は、山々に守られながら安穏が保たれてきた。その土地で食を育み、扱う人たちに話を伺うと誰もが「山によって台風からも免れ、水に困らない土地だからこそ食材の宝庫」と幸せそうに話す。安穏の地に広がる水田には空、雲、山並みが映りキラキラと輝いている。

【喫茶MILK】
「好きなものを選んだだけ」。そう店主が話す店内は凛とした空気感。

「MILK」の看板、その奥に三角屋根の建物。中では、カウンターから湯気が上り、赤いベロアの椅子の横で光と影が揺れていた。
「昭和57年にこの土地と出会って喫茶店を始めました。白樺の木を植えて、街中(まちなか)に高原のような場所を作りたかったんです」
40年以上続けてきた歴史は感じられるものの、止まってはおらず新しい空気が流れている。「張り替えながら使い続けている赤いベロアの椅子やライト、どれも特注品でもブランドものでもないんです。店舗用家具メーカーのカタログから自分のイメージに合うものを選びました」

お店で使用している陶器も店主が買い付けたもの。喫茶店の奥に進むと「我楽多蔵(がらくたぐら)」があり、陶器の食器がずらりと並ぶ。展示販売もしているので、自由に器を見たり、珈琲やパフェをおともにおしゃべりをしたり、思い思いの時間を過ごしながらその空気感も楽しみたい場所。

珈琲だけでなく、ソーダやパフェも人気。
右 青いクリームソーダ900円
左 ミルクパフェ1000円

ピザトーストは厚切りでチーズたっぷり。アツアツのうちに頬張りたい。厚切りトーストやホットサンドメニューもある。お食事メニューは他にも充実。ピラフ、ドライカレー、ビーフカレー、ナポリタン、ミートソーススパゲティなど、どれもスープ付きで900円前後。ケーキも全て、奥様のお手製。チーズケーキを頂いたが、甘さが上品で濃厚なフィリングとクラシックなクッキー生地がとてもおいしかった。
40年以上ご夫婦でカウンターに立つ。にこやかなおもてなしと、クラシックが流れる店内は小ぎれいにされていて心地よく、ついつい長居したくなってしまう。

MILK

山形県鶴岡市切添町20-24
TEL:0235-24-8730
9:00〜19:00
休/木曜

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【喫茶アンデス】
2代目店主が義母と一緒に立ちながら習った、喫茶の料理。なつかしのナポリタンは創業から守り続ける味。

レトロな青い階段屋根を登っていった2階にある「喫茶アンデス」。今、お店を支えているのは2代目店主の佐藤まりさん。結婚した嫁ぎ先が、当時お義母さんが営むアンデスだった。はじめは義母と一緒に店頭に立ち、その味を教えてもらい、今ではまりさんが引き継いでいる。

1階にある「お食事処金山」は釜めし屋さんで、実はまりさんのご主人が営むお店。互いに双方のメニューを注文することができるというのがユニーク。ご主人もまた、実の父から店を受け継いだというので、まりさん夫婦はともに2代目として任され、それぞれのお店を守り続けているということになる。
アンデスはガラスいっぱいに陽がさすので明るい店内で、漫画が種類豊富に置かれており、なんだかほっとする誰かの家に来たような感覚に陥る。ナポリタンは創業から変わらないメニュー。アツアツの鉄板にのせられ、「焼きナポリタン」のようにカリカリの部分も楽しめる。目玉焼きが添えられているのも嬉しい。サラダ、スープもついて800円。レモンスカッシュも一緒に注文。甘酸っぱいレモンスカッシュと濃厚でボリュームのあるナポリタンは満足度が高い。一方、オムライスは20年ほど前に誕生した後発メニュー。クリームソースがかかったものなど、オムライスだけで4種類。近くに大学ができたタイミングで新メニューを考えたという。山形県産のお米を使っているのがこだわりだという。他にも、ドリア、ピラフ、カレーなどメニューはたくさん。
「地元にいると当たり前だけれど、やっぱりなるべく地元のものを使いたいと思っています。ここ酒田で長年愛される喫茶店であり続けたいです」
学生にも愛されるが、住宅街にあることから、赤ちゃん連れからご年配まで利用客の年齢層は幅広い。利用しやすいボックス席のおかげか、家族連れも多いという。
「長年通ってくれている人に子どもが生まれたり、子どもだったお客さんがいつの間にか大人になったなぁ、というときに、喜びを感じますね」と言うまりさんの作るお料理やお店での立ち振る舞いからは、優しさや謙虚さ、ひたむきさが伝わる。お食事利用でも、パフェや珈琲で一休みでも。不思議と時の流れがゆっくりと感じられる場所。

喫茶アンデス

山形県酒田市高見台1-13-11
TEL:0234-31-4600
10:00〜20:00
休/月曜(祝日の場合は翌日)
駐車場有り

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【コーヒー&レストランジロー】
家族づれで満員。今なお愛され続ける昭和の老舗ファミリーレストラン

到着したのはお昼を少し過ぎた時間。でも、まだまだ満席。お父さんとお母さんが切り盛りする、レストランジローの厨房は大忙し。店内に入るとまるでタイムスリップしたかのような昔ながらの雰囲気が楽しめる。これだけファミレスチェーン店が勢力を伸ばす時代に、昔ながらのノスタルジックなファミレスは貴重であるとともに、大変賑わっていることに安心感をおぼえる。まだ食べる前から「いつまでも続いて欲しい」と思ってしまった。

きっとおいしいに違いない。ランチメニューはしょうが焼き定食、メンチカツ・ベーコンソテー盛り合わせ、ハンバーグ・ミックスフライの盛り合わせ、ステーキセット、カツ丼、ハンバーグカレー、ビーフシチューとエビフライ、グラタンなどなど。子ども達には夢の「お子様ランチ」もある。パフェや珈琲など喫茶メニューも充実しており、THE洋食屋さんのメニューが目白押しだ。家族連れのお客さんが多い。私たちはハンバーグ・ミックスフライの盛り合わせセットと、エビグラタンを注文。お味噌汁とライス、たくあんがセットに付くのがなんだか嬉しい。ハフハフしながら食べるなつかしの日本の洋食メニューは最高!一人でも二人でも、家族連れでも利用しやすい古き良きファミリーレストラン。

コーヒー&レストラン ジロー

山形県鶴岡市東新斎町10−46
TEL:0235-24-3064
ランチ 11:00~15:00
ディナー 17:00~20:00
休/木曜(水曜はディナーは休み)
駐車場有り

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【久村の酒場】
赤提灯に暖簾。中にはショーケースカウンターと愛らしい女将が出迎え、女将と常連さんの談笑を肴に郷土料理を食す

慶応3年(1867年)創業の酒屋が、昭和30年代に隣に作った「久村の酒場」。お酒を買いに来た客の角打ちの場だったが、酒場として定着。赤提灯と味のある暖簾をくぐり中に入るとまた驚く。ガラス張りのコの字のカウンターは、ガラス下にその日の肴が並ぶショーケースとなっている。カウンターの中では柔らかな庄内弁の女将が笑顔で迎えてくれる。

「私は六代目の妻なんです。嫁に来てから調理師学校に通って免許取ったのよ。庄内の味を食べてほしいから、季節のものを郷土料理としてお出ししています。本当にシンプルな普通の料理ばかりなんだけどね」
そう恐縮する女将さんに対して常連の人たちは「常連が食べるのはイカゲソセットだよね」「ここの餃子は日本一だと思う」「沖ギスのすり身汁は食べないと!」など皆口々に言い合いこの店の魅力が飛び交う。酒屋に併設された酒場なので日本酒の種類も豊富。カウンター脇には大きな燗つけ器が置かれている。

「イカゲソセットは厚揚げとイカゲソが少しずつ味わえるんだけど、それも常連さんの声からできたメニューなんです。それに、山形は寒いところだから発酵させた料理が多いですね」
店を愛する常連さんたちと女将の談笑を聞いているだけで心が温かくなる。こういった時間が酒場の醍醐味では、などと感じながら、ついついお酒がすすんでしまう。

久村の酒場

山形県酒田市寿町1-41
TEL:0234-24-1935
17:30〜21:00
休/日曜・月曜・不定休

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撮影:関めぐみ
取材&文:桃本梨恵(Lita)(MILK、久村の酒場)、中野桜子(アンデス、ジロー)
取材コーディネート協力:鈴木伸夫・有路理永

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