沖縄 やんばるの森 生命と癒しが溢れる世界自然遺産をHYと訪れる
やんばるの生んだ奇跡を知っていますか?
沖縄の森を訪れたことはありますか? やんばるの森の奇跡を知っていますか?
沖縄北部の「やんばるの森」は「奇跡の森」と呼ばれ、2021年世界自然遺産に制定されました。
そしてまた沖縄で生まれ育ったHYは、2021年に沖縄県世界自然遺産大使となり、この大切な財産を語り継ぐお手伝いをしています。
この森で起こった奇跡、人々の抱く夢、人と自然の共存する新しい沖縄の魅力を、訪れて肌で感じてください。(HY)
この森は見渡すすべてが命あるもの。
土の上に立つと「自分も生かされている」と実感し、
些細なすべてのことへ感謝がこみ上げる。
沖縄といえば青い海と白い砂浜ですが、ぜひ足を踏み入れてほしいのが、その先にある沖縄の森。ここやんばるの森は「奇跡の森」と呼ばれ、2021年、世界自然遺産に制定されました。森に入ると360度緑に包まれ、直射日光が遮られてキーンと澄んだ空気に変わる。香り、森が奏でる音、見たことがない動植物、景色、それらから自分も知り得ない感情を毎回呼び起こされる。やんばるの森は約1億年も息をし続けています。あぁ、自分もこの数ある生物の一つとして「生かされている存在なんだ」と実感するんです。そうすると些細なことへの感謝の気持ちがこみ上げてくる。自分を見つめ直せる場所ですね。
雨は山に降り、山にしみ込んだ雨は森を潤して小さな渓流になり、水は命を育み、私たちの生活を支えている。
では、何が奇跡なのか。入った瞬間にとびこんでくるのは、たくさんの生き物や植物、そして大地を踏んだときのパワー……それは奇跡としか言いようがない。でも、そもそもやんばるの森があるのは北緯27度の亜熱帯地域。同じく北緯27度付近の亜熱帯地域の多くは、砂漠や乾燥した草原が広がっていることが多く、こうして森林が発達していること自体が、「奇跡」と呼べるのです。この長い歴史の間に森が誕生した理由として、琉球列島が季節風や暖かい黒潮の影響で雨量が多いことが挙げられます。山々は水を蓄え、川となって潤いをもたらす。人々に水の恵みをもたらすのはもちろん、この森に、温帯と熱帯に存在する樹種を混成し、広大な森林と多種多様な動植物の育成をもたらしました。それはまさに、奇跡の巡り合わせといえるのです。
1. 完璧な保護色で目の前にいることに気がつかなかったヒメハブ。
2. キャップにとまってくれたリュウキュウハグロトンボ。
3. こちらもかくれんぼのうまいリュウキュウアカガエル。
4. 木登り中のオキナワキノボリトカゲ。
5. 雨上がりの車道に出てきて走り去ったリュウキュウヤマガメ。
やんばる国立公園
自然が与えてくれる圧倒的なパワーと癒し
沖縄のもっともっと内側……
奥深くどこまでも進めるのが森。
僕たちは沖縄の中でも中部で育ち、今も住み続けています。やんばるの森の存在は近く、幼い頃から遊び場でした。今でも僕たちはそれぞれが、ふとしたときにこの森にたびたび足を運ぶ。何十年も、奥へ、もっと奥へ……それほどまでに奥深い魅力がこの森にはあるのです。メンバーの仲宗根泉は小さい頃から父にたびたび森へ連れていかれ、「森の奏でる音を聴きなさい、感性を研ぎ澄ませて」と言われていました。それがいまの曲作りに大きな力を貸してくれている。ミュージシャンでなくても、個を見つめ感性を研ぎ澄ますと、きっと、新しい何かに出会うことができると思うんです。僕たちはたくさんのパワーを自然からもらっている。
1. 沖縄本島最北端の集落「辺戸集落」。琉球開闢神話で始まりの地といわれ、遺跡、王の墓、祭場、拝所も残る。共同売店があり人々が生活する。
2. 森には湧き水スポットが。生活水として汲みにくる人の姿も。葉っぱコップで飲む天然水は最高。
3. 日本一大きなどんぐり。「オキナワウラジロガシ」の木に10〜12月に実る。
4. 「森のエビフライ」とも呼ばれ、希少生物であるケナガネズミがマツボックリの種を食べた食痕。かわいらしい落とし物の発見。
人と自然が共存するために
ヤンバルクイナはもちろん、目を凝らすと小さな生き物たちに出会えるのも、森の楽しみ方の一つ。でも、その裏には森を守る人々の努力や苦悩があることを忘れてはいけません。ロードキル(動物の交通事故死)や犬、猫の置き去り、マングース等の外来種による希少生物等の捕食問題やゴミ問題。現状を知ることこそ、人と自然の共存への一歩だと気づかされました。
ネイチャーガイド | 平良太
辺戸集落出身。幼少期から山や海を遊び場にして培われた観察眼で植物や生き物の解説、星空ガイドまでこなすスーパーガイド。元自衛官で、野営が得意。地域づくりにも精力的に取り組んでいる。
案内人 HY
2000年結成のミクスチャーバンド。新里英之(Vo&Gt)、名嘉俊(Dr)、許田信介(Ba)、仲宗根泉(Key&Vo)の4名全員が沖縄県うるま市出身。「HY」は、彼らの地元・東屋慶名(Higashi Yakena)の地名が由来。2003年に2ndアルバム『Street Story』をリリースすると、インディーズとしては史上初のオリコンチャート初登場&4週連続1位という偉業を達成し、ミリオンセラーに。以来、多くのアルバムをリリース。国内ツアーに力を入れながら、カナダ、アメリカの主要8都市、台湾、韓国でもライブを実施。沖縄の自然を守る活動にも力を入れ、2021年には地元うるま市初の観光大使となり、沖縄県世界自然遺産大使に任命される。2024年9月からはHY25周年イヤーが始まる。
毎年、沖縄県でHY主催の音楽フェス「SKY Fes」を開催
案内人・語り HY(沖縄県世界自然遺産大使)
写真 G-KEN
文・編集 中野桜子