木とともに暮らすー岡山・真庭で自然とともに暮らす-5
岡山県の中北部に位置する真庭市は、県内最大の面積があり、そのうち8割を森林が占めている。ヒノキの産地としても有名で、林業や木材生産が盛んな地域だけに、その豊富な森林資源を生かしきるべく、本来は廃棄物となる製材端材や間伐材を使ったバイオマス発電を2015年からスタート。真庭市をバイオマスタウンとして発展させ、地域を活性化させる取り組みを行っている。木質バイオマスの活用を核として、家庭から出る生ごみをメタン発酵させて農業用の肥料として使用したり、瀬戸内海で養殖された牡蛎の殻を土づくりに活用し、米やワイン用のぶどうを栽培したり。真庭では自然と共生し、循環させていく暮らしが当たり前のように息づいている。
真庭産の木材を使って隈研吾氏がデザインしたSDGsの聖地
そんな循環型社会を世界に発信するランドマークとして、2021年に蒜山高原にオープンしたのが「GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)」。「GREENable(グリーナブル)」とは、自然と緑を意味する「GREEN(グリーン)」と、持続可能を意味する「Sustainable(サステナブル)」を掛け合わせた造語だ。
そのシンボルともいえるのが、真庭産ヒノキのCLT(直交集成板)で作られたCLTパビリオン「風の葉」だ。CLTは、ひき板(ラミナ)を並べたあと、繊維方向が直交するように積層接着した重厚な木製パネル。断熱性、耐火性、耐震性に優れ、ヨーロッパではコンクリートに代わる新建材として広く活用されているが、日本におけるCLTの開発・普及のパイオニアは真庭市。真庭の木材の魅力と可能性を発信するべく、2019年から約1年間、東京・晴海で展示されていたパビリオンが、その役目を終えて里帰り。人やモノが都市と地方を循環する新しいモデルケースになると同時に、建築物のアップサイクル例として持続可能性も体現している。
CLTの木製パネルと鉄骨を編むように組み合わせたデザインは、建築家の隈研吾氏によるもの。木の葉が舞い上がっていく様子がイメージされていて、中に入ると、森の中に入ったような感覚を体感できる。
ミュージアムでは現代アートも楽しめる
一角にある真庭市蒜山ミュージアムもほぼ岡山県産杉のCLTを使った建築で、設計を手がけた隈研吾建築都市設計事務所の建築模型などの資料と現代アートが楽しめる。館内には「風の葉」の端材を利用したスツールやテーブルを配し、幾重にも重なる木組み細工が施された内部階段は圧巻。今にも動き出しそうな有機的なフォルムで、柔らかくて軽やかだ。
サステナブルに貢献するアイテムをお土産に
国立公園の雄大な景色を望む屋上の「風デッキ」が人気のビジターセンター・ショップでは、蒜山の観光情報の発信と自然と人との共生につながるサステナブルなアイテムを販売。オリジナルのクラフトビールや、ヒメガマを使った蒜山がま細工のかごバッグなど地元産のものから、「GREENable」のコンセプトと合致した企業とのコラボレーションアイテムがずらりと並ぶ。お土産にはもちろん、サステナブルに貢献する第一歩として、手にとってみては?
茅葺の屋根から環境問題を考える
一番奥に建つのがサイクリングセンターで、アメリカの自転車ブランド、TREK社の電動バイクをレンタルしてサイクリングを楽しめるほか、蒜山高原の自然をより深く体感できるアクティビティを体験できる。
建物の近くまで来ると、軒から天井まで茅を使用していることに気がつく。まるで茅葺の屋根をひっくり返したかのようなデザインは実に斬新。葺き替えをせずに茅の状態を維持するのが可能なこのデザインを考案したという。「茅は、現代の建築材料からは失われてしまった、特別な質感を持っている。茅は、単に柔らかいだけでなく、建築の中に生命を吹き込む魔法の素材である」と設計した隈研吾氏。茅を復活させることは、建築デザインにとって重要なだけでなく、里山の風景や生態系を守るという環境問題の解決にとっても大きな役割を果たしていくのだという。
GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)
岡山県真庭市蒜山上福田1205-220
TEL:0867-45-0750
営業時間:9:00~17:00
休館日:水曜(祝日の場合は翌平日)
アクセス:車:米子自動車道蒜山ICから約3分
※駐車場は「ヒルゼン高原センター」駐車場を利用
公共(バス):岡山駅から中鉄バス 勝山~岡山線「勝山」(JR中国勝山駅前)で真庭市コミュニティバスに乗り換え「蒜山高原センター前」下車
真庭市蒜山ミュージアム
岡山県真庭市蒜山上福田1205-220 GREENable HIRUZEN内
開館時間:9:00~17:00(入館は16:45まで)
休館日:毎週水曜日
入館料:高校生以上1人300円 中学生以下無料
※詳細はHPを確認ください。