土佐打刃物と四万十ヒノキが台所に届くまで 高知に根付く鍛冶屋の文化
高知では、山の手入れがそのまま暮らしの質につながっている。鍛冶屋が山仕事の刃物を打ち、四万十川流域のヒノキがまな板となり、清流が土地の文化を支える。森を健康にすることは、川を守り、台所を支え、土地の未来を守ることでもある。土佐の手仕事は、その循環を静かに物語っている。
森を守り、川を守る。土佐の文化は、山から川を下りて台所に届く

カンカンカンカン……山里深い一軒から鉱物を打ち付ける音が小気味よく鳴り響く。高知には古くから鍛冶屋の文化が根づいている。
林業が盛んな土佐で、山仕事に欠かせない鉈(なた)や鎌を造る鍛冶職人が各地に生まれ、やがて鋼を叩いて鍛える「土佐打刃物」の技が育まれた。

「迫田刃物」は400年の土佐打刃物の伝統技法を受け継ぎ、初代・迫田春義氏が昭和48年に創業。昔ながらの鍛造技法に勤しみ、片刃、両刃、すべて自家鍛造を行う。

また、二代目・剛さんは包丁が優れていても砥(と)ぎが不充分では本当によい刃物として継続しないとし、日本有数の鍛冶師・砥ぎ師たちに師事。「砥ぎ」の完成度を希求し、砥石の使い方、手入れを広めることに努める。迫田刃物の製品は永久保証だ。

迫田(さこだ)刃物

その刃を受け止めるのがまな板。清流・四万十(しまんと)川の流域に育つヒノキは、水に強く刃当たりが柔らかい。
「土佐龍(とさりゅう)」では、植林された樹齢70〜80年の四万十ヒノキを間伐や除伐する。手入れをすることは、森を健康にし守ること。つまり、生き物の生態系を守り、地球温暖化を防ぎ、保水力を高めて山崩れなどの災害から守ることに繋がる。
山に降る雨は川となり、森を育て、木がまたまな板となる。川から始まる道具文化は、土佐が世界に誇る知恵と文化だ。


【上】通常は破棄される葉っぱも集め、精油(エッセンシャルオイル)として抽出する研究が進められている。

土佐龍

撮影 Bourbon
取材・文・編集 中野桜子
<高知への翼>
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