函館の古民家へ移住 カフェ開店やゲストハウス…歴史建築で街を再編集する人々の挑戦
降り積もる時間がかたちづくる風景
明治時代の倉庫が立ち並ぶベイエリア。その背後には、函館山が街をやさしく見守っている。
函館西部地区では、建物の用途を変えながらも外観や構造を極力残す、「使い続ける保存」が各所で進んでいる。その動きの中心人物の一人が、合同会社「箱バル不動産」を運営する蒲生寛之さんだ。
函館を離れて暮らした後、生まれ育った街を改めて眺めると、これまで価値として認識されてこなかった魅力的な古民家が多く残されていることに気づいたという。
「地域全体を見てこの街を再編集していけたら、もっと地域の価値が上がるのではないか。それを家業の不動産業を通して実現させたいと思ったのが始まりでした」と振り返る。
価値観を共有する建築士などの仲間とともに2015年、古民家への移住体験企画から活動をスタート。やがて、以前から気になっていた築100年超の旧生命保険会社のビルを、カフェやゲストハウスなどが入る複合商業施設へと再生させた。

重要文化財の建物を地域ぐるみで商業施設へと生まれ変わらせる試みも始まり、古い建物はまちづくりの主役として新しい価値を帯びつつある。
「活動を始めた当時に思い描いていた街の未来に、少しずつ近づいてきている気がします。函館には『バル街』というイベントがあって、街にたくさんの人が出て、本当に楽しいんです。あの賑(にぎ)わいが日常になるような雰囲気を、この街につくっていきたいですね」と、蒲生さんは先を見据える。
箱バル不動産(蒲生商事)
北海道函館市末広町18-25
船見町で和食がメインの定食と手作り菓子の店「ごはんおやつシプル」を営む新田麻由さんは、この街に魅せられ移住した一人。古民家を買い取り、建築士のアドバイスを受けながら土壁を抜いたり木材を切ったりと自らも大工仕事に携わって店をつくり上げた。

「バランスよく、栄養が摂れるごはんを」という思いで供される料理は、彩り豊かで体にやさしい味わい。古い建物を舞台にしたこうした日々の営みが、街に新しい時代の表情を刻んでいる。



ごはんおやつシプル
北海道函館市船見町7-24
Instagram @siple_hakodate
写真 木内和美
取材・文・編集 宮崎沙綾
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