カンヌ女優・岡本多緒が綴るラオスの原風景
才人が旅先で出会った忘れえぬ光景を綴る。
今回は今年、日本人として初めて、カンヌで最優秀女優賞を獲得したこの人
写真・案内人 岡本多緒
ラオス・ノーンキャウ
昨年の大晦日から今年の初めにかけて、私はラオスを旅しました。
東南アジア全般がそうであるように、ラオスもまた少数民族が多く暮らす国で、ラオス政府が公認するだけでも50、研究によっては240もの少数民族から構成されているといわれています。

ラオスは共産主義国家でもあります。私は長年、アメリカで暮らしてきました。多くのアメリカ人が持っている共産主義国へのアレルギーのようなものは、異国の感覚とはいえ、少なからず私に強い印象を植えつけていました。ですが、初めて訪れた彼(か)の国は、アメリカのような先進国の人々が抱くイメージとは違って、とてものどかで、平和な印象を受けました。


もちろん、たった1週間の滞在ですから、わかったような気になるのは危険だと思います。それでも、国の至るところでたなびく共産党の旗と、共存する多様な民族が奏でるハーモニー、そのバランスがとても興味深く、人々は資本主義の社会とはまた違った豊かさを享受している、そんなふうに思えたのです。

とくに北部にある、ラオスの原風景が残る村・ノーンキャウは格別でした。未舗装の街路や、川で遊ぶ子どもたち。その向こう側では牛や豚、鶏たちが放し飼いにされています。当然、その動物たちは家畜ではあるのですが、そのときを迎えるまでは自由を謳歌(おうか)している……、その様子は日ごろ、エシカルなライフスタイルを心がけ、アニマルライツを気にかけてきた私の目には、楽園のように映ったのです。


多様な民族と動物たちとが共存する美しさ――。それが、初めてのラオスで私が強く感じたことだったのです。
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