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魂を見つめ直す街ソウル 写真家が心通わせた少年ともたらされた癒し

魂を見つめ直す街ソウル 写真家が心通わせた少年ともたらされた癒し

LIFE STYLE 旅の出会い

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才人が旅先で出会った忘れえぬ光景を綴る。今回は話題のドラマのキービジュアルも撮影した、注目の写真家。

写真・案内人 川島小鳥

1980年、東京都生まれ。写真家。早稲田大学第一文学部仏文科卒業。主な作品集に『BABY BABY』(2007)、『未来ちゃん』(2011)、『明星』(2014)、谷川俊太郎との共著『おやすみ神たち』(2014)、『おはようもしもしあいしてる』(2020)、『(世界)²』(2021)、『s(e)oul mate』(2024)、『サランラン 사란란 (Sa-lan-lan)』(2025)。第42回講談社出版文化賞写真賞、第40回木村伊兵衛写真賞を受賞。NHK連続テレビ小説『ばけばけ』や、大河ドラマ『豊臣兄弟!』のキービジュアル撮影も担当。

’23年秋からの半年間に、僕は幾度となく韓国・ソウルに通いました。

最初は“逃避行”のような旅でした。当時の僕は仕事や私生活に行き詰まり、いっぱいいっぱいの精神状態でした。そんなとき、たまたま彼(か)の街に暮らす友人が「遊びに来ない?」と誘ってくれて、僕は逃げるように東京をあとにしたのです。

果たして……。訪れたソウルは、街の景色も道ゆく人もすべてが新鮮に見えて、街路を歩くだけでどこか気分が晴れていくようでした。じつは、写真を始めるより少し前、高校生のころに交換留学生として2週間だけ、僕はソウルの学校に通ったことがありました。そのときに肌で感じた凛とした街の空気や、温かでとてもエネルギッシュだった同級生たちのことを懐かしく思い出しながら「もう一度、新鮮な気持ちで写真に向き合いたい、ここソウルで作品を撮りたい―」、そんなふうに思い至って、この隣国の街に通うことにしたのです。

今回、皆さんに見ていただくのは、街の真ん中を流れる漢江(ハンガン)の河川敷で撮った写真です。
この街で作品を撮ろうと決めた僕は、現地で被写体になってくれる人を探しました。一人か二人でいいのです。旅先に気の合う友人がいてくれるだけで、その旅が、そこに見える世界が豊かになると、僕は信じているからです。

そうして出会い、協力を申し出てくれた写真の彼は、高校は卒業したけれど兵役はまだこれからという“狭間(はざま)”の少年でした。そして、年齢こそだいぶ違いますが、そのときの僕自身も、いまだ定まらないフラフラとした気持ちを抱えたままでした。

沈みゆく太陽を背にした彼の姿を写真に収めていると、互いの揺れ動く心が通い合う気がしました。やがて、僕はシャッターを切りながら、かつての自分が報われていくような、いまの自分が癒されていくような、とても不思議な感覚に包まれていったのです。

「Seoul」と「soul」。綴(つづ)りこそ違いますが、「魂」を見つめ直すことができた街―、それが、僕にとってのソウルなのです。

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