出雲の地からお取り寄せ 朝ごはんがご馳走になるお米
食いしん坊の方々が出合った、とっておきのお取り寄せを教えてもらう連載。暮らしを幸せにしてくれるあの味を求めに、旅をしたくなることでしょう。
一粒一粒の味がしっかりしている米で握る塩むすびはご馳走
食べることが大好きで、食事を創作のエネルギーにしている、作家の千早茜さん。SNSにも日々のお茶や食事をアップしている。生粋の食いしん坊である彼女が今夢中になっているのが『出雲神結米』だ。
「取材で石見銀山を訪ねた際に、武家屋敷をリノベーションした『暮らす宿 多郷 阿部家』に宿泊したことがあったんです。夜ごはんの最後に、土鍋で炊いた米で握る、塩むすびが篭に盛られて出てきて。あまりのおいしさに、すぐに『これ、どこのお米ですか?』と聞いちゃいました。それが『出雲神結米』との最初の出合いです。取材に同行した編集者も喜んで食べてましたね。それをきっかけに取り寄せ始めました。
我が家は夜は炭水化物をとらないので、ごはんを食べるのは朝だけ。ちなみに昼は大好きなお菓子を食べるのが日課です。お米自体がおいしいから、ごはんのおともにはあまり頼りません。じっくりと炊きたてのお米を味わいます。お米を研いだら、冷蔵室で30分から1時間冷やしてから炊くのがこだわり。冷水から炊くと、デンプンがしっかり糖分に分解されて甘みが出ておいしくなると聞いてからは、必ず冷やすようにしています。ほんの少し芯が残っている、硬めの炊き上がりが好きなので、炊飯器で炊く場合は、あえて早炊きモードで。週末など時間に余裕があるときは、萬古焼の土鍋で炊きます。
『暮らす宿 多郷阿部家』でいただいたときのようにシンプルに塩むすびにして食べることもありますし、小鉢をいくつか用意して、定食のようにして食べることも。夫と一緒に、毎回1.5〜2合はペロリと食べますね。
著書の『さんかく』が重版した際は、作中に『塩むすび』という章があるので、朝ごはんにおにぎりを作って食べると決めているんですが、最近もこのお米を炊いて三角のおにぎりを作りました。仕事が忙しくてどんなにバタバタしていても、夫と会話をしながら朝食を食べる習慣を大切にしています。この時間にほっとしますね」
『むすび営農組合』の出雲神結米
『出雲国風土記』の中に登場する、仏経山のふもとにある結地区にて、減化学肥料・減農薬で育てられた米。収穫時期を見極めることで、一粒一粒の味が立っており、ほどよい粘りがある。
3,888円(1kg・6袋セット)
TEL 0853-31-4712
千早 茜
作家。『魚神』で第21回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2023年『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞。新刊は、傷をテーマにした短編小説集『グリフィスの傷』(集英社)。Web連載「なみまの わるい食べもの」も好評。
撮影 江原隆司
取材・文 高田真莉絵