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佐賀「嬉野茶 1」茶畑のティーセレモニーで解放する~Deportare Trip vol.9

佐賀「嬉野茶 1」茶畑のティーセレモニーで解放する~Deportare Trip vol.9

LIFE STYLE DEPORTARE

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日本一の茶どころ嬉野の茶塔でティーセレモニーを体験

新芽の季節。美しい若草色に染まった茶畑が広がるのは、佐賀県嬉野(うれしの)市。深い山々に囲まれた盆地で、澄んだ空気と清らかな水に恵まれたこの地は、お茶の栽培に最適。全国茶品評会で1位を獲得する名茶「うれしの茶」として知られている。

僕らが訪れた3月末は、新芽が大きく葉を広げた時期。「うれしの茶の茶葉は、日本茶にはめずらしい丸みを帯びた形状で、香りや旨(うま)みが強いのが特徴」とは、125年続く茶農家「三根孝一緑茶園」5代目の三根孝之さん。うれしの茶の美味しい淹(い)れ方は、熱湯は避けて65度から70度の低い温度で淹れるのがポイント。「アミノ酸成分が出て出汁(だし)のような旨みを感じます」。

そんな珠玉のお茶を茶畑で楽しめるのが「茶塔」(池田農園)。茶農家(茶師)が自ら淹れるティーセレモニーで、肥前吉田焼の茶器も、お茶菓子も全て地元で作られた名品ぞろい。鳥のさえずりしか聞こえない静寂の空間で、茶の香りや舌に残る茶の味を感じながら味わう一杯は、まさに至宝。

写真の女性はコンシェルジュ。春から初夏にかけての農繁期は、研修を経たコンシェルジュが対応しています。農繁期以外の茶空間体験は、茶師、コンシェルジュから選べます。

お茶の苦み成分であるカテキンは、抗酸化作用や抗ウイルス作用のほか、血糖値の上昇を抑えるなどの効果が期待できる。日本三大美肌の湯を有する宿「茶心の宿 和楽園」では、そうしたお茶の効能を活かした茶風呂や茶会席などを提供。アイデアとお茶の可能性には驚かされる。

お茶づくしの佐賀の旅は、地元を愛し、日本の茶文化を守る人々の思いを感じる旅となった。

嬉野の茶を訪ねて、温泉、焼き物の魅力に触れる

嬉野市は、佐賀県の西部に位置し、九州佐賀国際空港から車で1時間ほど。長崎空港からは一般道を利用しても約40分という場所にある。「肥前小富士」とも呼ばれる唐泉山(とうせんざん)などの山々に囲まれた嬉野盆地と、有明海へと注ぐ塩田川下流の平野からなる自然豊かな土地だ。

今回の旅は、日本屈指のお茶の産地として「うれしの茶」の魅力をご紹介したが、嬉野といえば、“日本三大美肌の湯”として知られる「嬉野温泉」で有名な観光地。温泉街には嬉野温泉公衆浴場「シーボルトの湯」をはじめ足湯スポットが点在し、「湯宿広場」では日本初の温泉ミストによる「足蒸し湯」も楽しめる。

温泉水で煮込む「温泉湯どうふ」は嬉野温泉ならではのグルメで、江戸時代から伝わる名物料理。なめらかにとろける湯豆腐と豆腐成分が温泉水に溶け出した豆乳状のスープを出汁にしたお鍋をいただいたが、これが、たまらなく美味(うま)い。地元の人いわく、「お店によってタレや食べ方が違うので、味もさまざま」。甘口で味わい深い佐賀県産の日本酒との相性もいい。嬉野温泉は、飲めば胃腸や肝臓などの機能を活性化させるそうで、たしかに、酒宴のシメでいただいた湯どうふは胃に優しく沁(し)みわたった。

お茶、温泉ときて、実はもう一つ、嬉野には脈々と受け継がれる伝統文化がある。それは、「肥前吉田焼」。佐賀は、有田焼や伊万里焼など磁器産業が盛んな土地で、肥前吉田焼の歴史は425年ほど。市内には伝統工芸を受け継ぐ工房があり、毎年3月下旬から4月上旬に開催される「吉田おやまさん陶器まつり」の期間は、ガイド付きの窯元工場見学ツアーも行われている。

今回訪ねた「茶心の宿 和楽園」では、部屋の壁に肥前吉田焼の陶片を使用した“陶片アート”の客室を今春オープン。昔ながらの水玉柄の急須や湯呑みなどの日常使いの食器で親しまれてきた肥前吉田焼の新たな魅力を発見できる。

案内人:竹下雄真

1979年、神奈川県茅ヶ崎市出身。会員制パーソナルトレーニングジム「デポルターレクラブ」代表。トップアスリートをはじめ多くの著名人の肉体改造に携わり、ウェルネス以上、メディカル未満の領域で、クライアントの進化に日々努める。著書に『ビジネスアスリートが実践する最強のリカバリー術』(光文社)ほか多数。

茶塔

茶畑でティーセレモニーが体験できる茶空間体験「ティーリズム」の詳細はこちらから

https://www.tea-tourism.com/experience/

うれしの茶の歴史と魅力を体感するならここへ!

県内で唯一、全国でも貴重な茶専門の資料館となるのが、うれしの茶交流館「チャオシル」。茶揉(も)み体験や茶染め体験ができる体験室、古い茶道具や茶の木栽培の農工具などの展示を通して、うれしの茶の歴史と製造工程を学ぶことができる展示室などで構成されている。

お茶の淹れ方教室なども行われていて、カフェコーナーでは、うれしの蒸製玉緑茶やうれしの釜炒り茶、うれしの紅茶をいただける。

うれしの茶交流館「チャオシル」

佐賀県嬉野市嬉野町岩屋川内乙2707-1

TEL 0954-43-1991

長崎自動車道嬉野ICから長崎方面へ車で約10分

https://www.city.ureshino.lg.jp/kanko/ureshinocha/_23805.html

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撮影:大串祥子 取材・文:竹下雄真 編集:服部広子