サンタクロースになるには?知られざる公認制度と人手不足のリアル

「トナカイのソリって、どうして空を飛ぶことができるのですか?」
「トナカイが好きな食べものは何ですか? クリスマスイブの夜に用意しておきます!」
「ソリの飛行高度は何メートルですか?」
「プレゼントの最大積載量は何キロですか?」
「グリーンランドと日本を何往復していますか?」
「日本に中継基地はありますか? あったら具体的な場所を教えてください」
「配送業務の委託はされていますか? もし行っていたら委託先の運送会社名を教えてください」
手厳しい質問から、子どもなら誰でも知りたいことなんだろうなぁ〜と思うものまで、これまで数えきれないほど聞かれてきた。
ひょんなことから、毎年デンマークで開催されている「世界サンタクロース会議」と並行して行われる、グリーンランド国際サンタクロース協会による公認サンタクロース認定試験を受けることになったのが今から27 年前。
「煙突のぼり」「ジンジャークッキーの早喰い」「HoHoHo〜の発声試験」など、様々な難関を突破してアジア地域から初の公認サンタクロースに選出された。
さらに2005年には「トナカイのソリ操縦士」の訓練と試験があり、ソリの適正な進入角度とか、積載量制限値規定に関する暗記ものなど、もしかしたらANAのパイロットなら軽々と合格しそうな内容もあれば、雪が積もっていない道路際の溝でスタックしてしまったソリを、サンタクロースが自力で元に戻すというパワーのいる実技もある。
火事場の馬鹿力というか、勢いで臨んでその難関も突破してしまったが、実際のところいまだトナカイのソリの操縦は苦手なままでいる。
旅客機のパイロットが不足すると予想されている、いわゆる2030年問題と同じタイミングで、実は公認サンタクロースも深刻な人手不足に直面する。やりがい、達成感とか、言葉では表し難いが、私が長いこと続けてこられた理由はいくつかある。
夢に描いたようなファンタジーな世界と、厳しい現実が交錯した公認サンタクロースのコミュニティに浸(つ)かっていると、時につらいことがあっても、これまで続けてきてよかったと思うことも多々あった。
そろそろ“公認の後任”を探し出して継承していかないと、日本に正しいクリスマスの習慣が根付かなくなるのではと危惧する。
パイロットは、比較的待遇のよい職といわれているが、公認サンタクロースは基本的に無報酬。なり手がなかなか見つからないのも無理はないが、地道に探していきたい。

我こそはサンタクロースにふさわしいと思う方は、ANAの機内や空港で私を見かけたらぜひお声がけを。毎年、自腹で真夏のデンマークへサンタクロースの衣裳を身に纏(まと)って飛行機に乗らなければならなかったり、なかなかハードな苦行も私と一緒に体験が可能(笑)。
〜つづく
イラストレーション/ソリマチアキラ
パラダイス 山元 | ぱらだいす やまもと
プロ搭乗客。 ANA ミリオンマイラー。音楽家。餃子レストラン「荻窪餃子 蔓餃苑」オーナーシェフ。著書に『読む餃子』、英語版・フランス語版餃子レシピ本『GYOZA』、『パラダイス山元の飛行機の乗り方』『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』などがある。全国各地で開催中の「皮からつくる本気の餃子づくり教室」などの出演イベントの詳細は X(旧Twitter) で発信中。
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