羽田発ロサンゼルス行きでタイムトラベル 深夜便で過去と未来を旅する贅沢
羽田空港から定期国際便が復活、その初便として「羽田―ロサンゼルス」線が就航してから今年の10月で15年。搭乗ゲート前で盛大な初就航セレモニーが開催され、パイロットの制服を着用した人気モデルの押切もえさんから初便搭乗記念品を手渡しされ満面の笑みという写真がたまたま携帯の画面にアーカイブ表示され、当時のタイムラインを見返しているうちに急にロスへ行きたくなった。自分の過去の経験から、再び感情を揺さぶられ、旅へと導かれる流れは加齢していっても全く変化がない。

当時のロス初便も、もちろんというかタッチ搭乗だった。羽田からの深夜便に乗ると、ロスには日付的に前日に到着することになる。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』さながらのタイムトラベルだ。以来、ロスタッチを幾度となく繰り返し、過去と未来を何度も行ったり来たりしてきた。折り返しの復路便に搭乗するまでの数時間の滞在中、空港周辺のハンバーガーショップへ行ったり、スーパーでどぎつい着色料がスプレーされたジャンキーなスナック菓子を買い込んでみたり目一杯アメリカを肌で感じつつも、かぶれないうちに日本に戻ってくるというのが自分にとっては心地よかった。
ただ、いつまでも若者と同じように行動できるわけではないことくらい自覚し始めてきているので、左ハンドルのフルサイズのアメ車でロングドライブをするとか、そろそろやり納めておいたほうがよいと思うこともあったりする。私としたことが、飛行機に乗っているだけで充分満足なのに、いつもと違う、ロスに行ったらあれもこれもしなくては!という切迫した感情にスイッチしてしまったのだ。
事前にANAの「明日へのつばさ」海外旅行保険にも加入。 直近に搭乗した国際線は、メキシコタッチだったので、航路的に同じロスは途中下車感覚。直前の予約、エコノミーの通路側席で充分くつろげたものの、ロサンゼルス空港は、アメリカ入国の洗礼というか、イミグレーションが混雑していた。預けた手荷物が回転台でぐるぐるしっぱなしなのでは、とかいろいろな不安にかられるうちはまともらしい。これも旅の醍醐味と開き直る。
そして無事に手荷物をピックアップ、レンタカーのシャトルバス乗り場まで来たものの、空港内の道路は大渋滞。アメ車がただ渋滞しているだけなのに、なんだか楽しい。けたたましくクラクションを鳴らすクルマ、ストレッチしたリムジンが乗降レーンに近づけず道の真ん中で立ち往生していたり。 レンタカーで走り始めてしばらくは、交差点を曲がるたびにワイパーを作動させていた。ひっきりなしに離着陸する飛行機を眺めつつ、お目当てのハンバーガーを頬張った。目の前を自動運転のタクシーが走っていて、あー、これが未来! と感じてしまった。
〜つづく

イラストレーション/ソリマチアキラ
パラダイス 山元 | ぱらだいす やまもと
プロ搭乗客。 ANA ミリオンマイラー。音楽家。餃子レストラン「荻窪餃子 蔓餃苑」オーナーシェフ。著書に『読む餃子』、英語版・フランス語版餃子レシピ本『GYOZA』、『パラダイス山元の飛行機の乗り方』『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』などがある。全国各地で開催中の「皮からつくる本気の餃子づくり教室」などの出演イベントの詳細は X(旧Twitter) で発信中。
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