マーガレット・リバーにサーフカルチャーが根付いた理由を考える〜豪州凝縮WESTERN AUSTRALIA-1
サーフィンの聖地というとハワイを思い浮かべる人が多い。しかし実はオーストラリア、特にマーガレット・リバーもまた、サーファーたちの間では聖地と呼ばれている。マーガレット・リバーでのサーフィンの歴史は1903年。ハワイでサーフィンを習得したイギリス人のアーサー・ヘイデンがマーガレット・リバーを訪れたことがきっかけ。アーサーはマーガレット・リバーの海岸に押し寄せる波の良さに感銘を受け、この地でサーフィンを始めたのと同時に、多くの人々にサーフィンの魅力を伝えたことが始まり。
因みにサーフィンの起源はよくわかっていなく、1778年にイギリス人探検家ジェームズ・クック船長がハワイを訪れた際には、すでにサーフィンが盛んに行われていたことが記録されている。オーストラリアへはその10年後の1788年。イギリス人がシドニーに植民地を建設した際、ハワイからサーフィンが伝わったとされている。とはいえ、ハワイもオーストラリアも当時は漁の道具として使われていたもので、その後徐々にスポーツとして発展するようになる。
1914年、マーガレット・リバーでオーストラリア初のサーフィン大会が開催された。1920年代にはマーガレット・リバー出身のサーファーが、ハワイで開催されたサーフィン大会で優勝するなど、世界でもトップクラスのサーファーを輩出するようになる。1966年、世界初のプロの大会が開催されたのもマーガレット・リバー。70年代にはマーガレット・リバー出身のサーファー達が世界ツアーで活躍。こうしてこのエリアがサーフィンの聖地として知られるようになっていった。
マーガレット・リバーでスポーツとしてサーフィンが盛んになるのと同時に、サーフィン文化も発達していく。多くのサーファーが海との共生を大切にし、海を単なる遊び場ではなく、自然と人間が共存する場所として捉えている。彼らは海の自然の力と美しさに敬意を払い、自然との調和を大切にし、海から自由と冒険を求めている。彼らにとってサーフィンは、単なるスポーツではなく生きる喜びや人生の楽しみそのもの。そんなオーストラリアのサーファー達の海との向き合い方や哲学は、世界中のサーファー達に大きな影響を与えている。
サーファーたちはまた、自然環境問題や海洋生物の保護活動にも、寄付などを通して積極的に参加。1990年代から2000年代にかけて、11度のワールドチャンピオンに輝いた世界最高峰のサーファーであるケリー・スレーターは、オーストラリア環境保護基金に100万ドルを寄付したことで知られている。
マーガレット・リバーサーフィン文化が定着したのは、海岸線へ押し寄せる波の良さに加え、自然豊かな環境に恵まれた場所ということも重要な要素。自然との繋がりを大切にするサーファーにとって、森の自然や生き物たちと触れ合うこともできるマーガレット・リバーの自然環境こそが、サーフィン文化の根付く大きな要因となったことは間違いない。
写真・文 山下マヌー