失われた村を失われたまま再生する〜豪州凝縮WESTERN AUSTRALIA-5
「マーガレット・リバー」とは、元々は村の名前。村が注目されたのは、ゴールドラッシュによるもの。1896年に川で金が発見されたことにより、マーガレット・リバー周辺に多くの金鉱夫が集まり、ピーク時には約1万人の金鉱夫が住んでいたといわれている。しかし金の産出量は徐々に減少。1900年頃に、ゴールドラッシュは終焉を迎える。
ゴールドラッシュは短期間で終わり、人口は減少しインフラも荒廃。それを救ったのがワイン。1960年代にこの地でワイン造りを始めたことが、マーガレット・リバーのワイン産地としての歴史の始まり。その後マーガレット・リバーのワイン品質が高く評価され、世界中から注目を集めるように。
同時に周囲の山と海の自然環境も評判となっていく。とくにサーフィンスポットとして人気を集めた。ハワイアンスケールの大波が打ち寄せるサーフィンスポットとして、1980年代からサーフィンのプロツアーの開催地にもなり、世界中のサーファーが訪れるように。
つまり、ワイン産地としてのポテンシャルとサーフィンスポットとしての人気が、マーガレット・リバーの注目を集め、住む人と観光客が増えるきっかけとなったともいえる。
マーガレット・リバーの北部にウィッチクリフという村がある。マーガレット・リバー同様ゴールドラッシュで栄えた村だ。しかしゴールドラッシュの終焉とともに、やはりマーガレット・リバー同様、村は廃れていく。
現在のマーガレット・リバーは人口約1万6000人が暮らしているが、一方ウィッチクリフの人口は1000人未満。この差は一体何から来るのか?「マーガレット・リバーよりも内陸部に位置しているため交通の便が悪く、人口減少に拍車がかかった」というのが大方の意見。
そんなウィッチクリフを再生させようとする人々がいる。
人が去って使われなくなった建物を買い取り、昔の姿を残しつつ廃材を使い修復。観光資源として、活用と再生を図っている。その手法は古い建物を壊しスーパーマーケットやお土産屋が立ち並ぶ姿となった、マーガレット・リバーとは異なるもの。ゴールドラッシュ時代の歴史や文化を保存し、後世に伝えていくことに力を注ぎ、当時の衣装を着た人々が町を練り歩き、鉱山探検や金の採掘体験など、伝統的文化を復活させるためのイベントなども開催している。それらの活動によりウィッチクリフはワイン産地としてだけでなく、歴史や文化の観光地としても人気を集めつつあるのだ。
海岸沿いに位置し、成熟した観光地へと姿を変えたマーガレット・リバー。内陸部に位置し、ゴールドラッシュ時代の歴史や文化を残そうとするウィッチクリフ。それぞれが差別化を図ることで、このエリアの魅力がさらに深まっていくことは間違いない。
写真・文:山下マヌー
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