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ウィーンで感じた毅然と性善説 誇り高き街へANAが誘う

ウィーンで感じた毅然と性善説 誇り高き街へANAが誘う

TRAVEL 2024.08  ウィーン特集

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オーストリアに1週間以上滞在した経験を持つ海外旅行者は、少ないのではないか。そもそもオーストリアに行ったことがあるという日本人が少ない。

2023年、在オーストリア日本大使館によると、オーストリアを訪れた日本人は7万6600人。コロナ明け直後だったとはいえ、これは相当に少ない数字だ。
行く人数が少ないと、この国の情報に触れる機会もなく、多くの人が抱くこの国のイメージは「ハプスブルク家」「音楽」、それと「ウインナーコーヒー」(そもそもそんな名前のコーヒーは存在しなかったのだけど)くらいしか浮かばない? 実際、自分もそう。今回の取材まで行ったことがなく、「ベートーヴェンが活躍した国」というイメージしか持っていなかった。

街に入った途端に感じたのは、街の景観から受ける「圧」のようなもの。もちろん、それは良い意味での圧であり、「毅然とした」威厳を放っているという言葉が正しいといってもよいかもしれない。毅然且つ、威厳を保つ街並みは、なにかこちら側に「この国ではちゃんとしないと」と、そんな気構えにさせる、そんな「圧」。

実際、ウィーンに暮らす人々は皆、きちんとしている。少なくとも自分にはそう感じた。加えて誇り高く、自信に満ち溢れているようにも思える。その理由を考えたとき、ハプスブルク家の遺産である壮麗な宮殿や歴史的な建造物、洗練された文化など、彼らには誇れるものがたくさんあることに加え、第二次世界大戦で甚大な被害を受けた街を、市民たちの努力と協力によって復興させ、美しい街並みを守り続けてきたからではないだろうか。街に対する強い愛情と誇りが人々の表情に現れているのだ。その誇りが、彼らをオープンでフレンドリーな人柄にし、観光客である我々をも温かく受け入れてくれるのだろう。

その人柄は人を信じるということにも通じている。たとえば駅の出口には改札もなければ、切符を提示する機械も設置されていない。日本のような切符や電子カード、スマホをタッチする機械が(一部の駅を除いて)まったくない。ヨーロッパのいくつかの国では出口に改札がないということはあっても、入口と出口、どちらにもないというシステムは、かなり新鮮というか斬新。そして思った。「キセルやタダ乗りする人がたくさんいるのだろうな」と。

ところが、ほぼ皆無だという。その理由の一つが、一年間公共交通機関乗り放題のパスが365ユーロという安さで購入できるということ。つまりバスでも電車でもトラムでも、一日1ユーロ(=約170円)で何度でも何回でも乗れるパスをほぼ全員が持っているという前提のシステム。だから改札を設けたり機械を導入して無駄なお金をかけることや、人員の配置などはしなくてもよいという考え=ウィーン性善説が成り立っているのだ。それは年間約4500万人の観光客に対しても同様。「ここにくる観光客の皆さんの中に、悪い人はいませんよね」という前提。車内や駅での検札が稀に行われているとはいえ、基本的には信頼関係と自己責任に基づいたシステムで成り立っているのだ。

善意に基づいたシステムを実感したのは国会議事堂でも。議事堂内に図書館やカフェがあることを知り、ぜひ訪れてみたいと出かけたのだが、受付でパスポートの提示を求められた。パスポートを持っていなかったため、日本の免許証を提示したところ、入館が許可されたのだ。受付のスタッフは免許証に書かれている日本語を理解できないはずだし、第一これが本物の免許証かどうかどうかもわからない。それなのに、国会議事堂に入館が許されるというのは、日本では到底考えられないこと。そもそも戦後しばらくスパイ天国だったこの国で、国会内の施設が開放されているということに驚く。

今回の滞在中、交通機関や国会議事堂以外にもウィーンの人々の優しさを感じる場面は数多くあった。もちろん、それを「1週間程度の滞在でなにがわかる」と言われればその通りかもしれない。しかし、逆に1週間程度の滞在でも、ウィーンで感じたようなことを感じられない国や地域があることも確かだ。少なくとも、ウィーン滞在中に悪い思いをしたことは一度もなかったのだから。

そんなウィーンに、2024年8月1日からANA便が復活する。東北大震災の復興支援として、日本へ1億円を超える寄付を送ってくれたオーストリアの誇り高く優しき人々と、もっと近づき、知り合うべきだと思う。

ウィーンへの翼
東京国際空港(羽田空港/HND)からANA直行便利用でウィーン国際空港(VIE)まで約14時間(毎週月・木・土発)。
ウィーン国際空港から市内まで快速電車(CAT)で約16分、タクシー、バス共に約30分。
帰国はウィーン国際空港(VIE)からANA直行便で東京国際空港(羽田空港/HND)へ(毎週火・金・日発)。

写真・取材・文 山下マヌー
協力 ウイーン市観光局、オーストリア大使館観光部オーストリア政府観光局

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