世界一グリーンで美味しいものを取り込む~自然と共存する都市1
「世界一グリーンな都市」を目指しているバンクーバー。今回の取材で感じたのは、町の美観を保つという文字通りの「グリーン」という意味に加え、自分自身の身体に「グリーン」を取り込もうと考える人が多いということ。町にはベジタリアンやビーガンの店も多く、それらの店に食材を提供するオーガニック栽培の農家も多く存在する。
その理由について、ビーガンレストラン“FOLK”のオーナーシェフ、Colin Uyedaさんは、「カナダ全体でベジタリアンがブームになっていることもありますが、とくにバンクーバーの近くには良いファームがある。自分のようにそういう素材を使って料理することが好きなシェフが多いのではないか」と推測する。
オーガニックファームの多くが空港の南側、ラドナやデルタエリアの田園地帯に点在。町から2時間弱で行ける距離のため、運搬コストもCO2排出も抑えられ、そういう点でも「グリーン」に貢献している。
ビーガン、ベジタリアンの店というと、だいたいにおいて味に飽きがくるうえに、素材が単一的というイメージがあり、どうも足が向かないという人も少なくない。ところがバンクーバーは季節ごとに収穫できる野菜が異なり、メニューも頻繁に変わる。因みにFOLKでは春夏には2週間ごとにメニューがかわる。
味付けはというと「自分は日本の血も入っているので日本の調味料も使う。自分がおいしいと思う方法で色々試している。フェイクミートは使わない。野菜だけの素材を追求したメニューを考えて提供したいからね。ワインももちろんオーガニックでナチュラルなものを選んでいる」。
そして仕上げに美しくお皿にディスプレイされて提供される料理。ベジタリアンでなくても食べに行きたくなるレストランなのだ。
日本のようにまだ一部の人にしか受け入れられていないビーガン系の店だが、ここバンクーバーでは客層も様々。ビーガンフードが好きな人もいれば、初めてビーガンを試した人やそこからリピーターになった人、家族連れ・・・様々な人が、「クリーン」で美味しいものを身体に取り込んでいる。
都市と自然との共存において、自分はなにを食べるべきなのかを考えるということが、最も大切なことなのかもしれない。と、そんなことを感じた今回のバンクーバーでもある。
取材・文・写真:山下マヌー