タイの端っこで考えた「ローカル体験ってなんだ?」〜タイ リアルローカルに触れる5
「暮らすように旅する」、「ローカル体験の旅」、「ローカル御用達の店」。これらは雑誌の旅特集のタイトルなどで時折目にするワード。その内容はというと、大抵の場合“ローカル料理店”(得てして観光客向けに味付けされていたりするんだけど)の紹介だったり、“地元マダム御用達スーパー”の紹介だったり、“セレブ家族の一日を追う”、みたいな内容が並んでいることが多い。それはそれで間違いではないし、そもそも観光客がリアルローカルなエリアに行くのはハードルが高い。それに行ったところでリアルな現地料理の味付けが美味しいとは限らないし、楽しいことが待ち受けているとも限らない。だから雑誌の特集としては、そのくらいが“丁度いいローカル加減”の観光特集なのだ(そう、「旅」ではなくあくまで「観光」)。
今号の「翼の王国」タイ取材では、この国に残る本来の景色を見たり、昔ながらの伝統や風習を重んじながら生活している人々と触れ合いたいと、旅に出た。幸いタイにはそのような場所が少なからず残されている。山の豊穣な土地、海からの豊かな恵みを受け暮らす人々の、誰もが遠くから来た旅人を暖かく迎え入れてくれた。食べるものに困らないということは人々を争いから遠ざけ、心さえも豊かにさせるに違いないのだと思う。自分たちのテリトリーの中で、自分たちの必要なものだけを収穫。そして時折訪ねてくる我々のような遠方からの客人に対して、惜しみもなく分け与えてくれるタイの人々の懐の深さに驚く。
今回誌面で紹介した村や島は、宿泊施設や衛生面などの基準を満たし、国から観光客の受け入れを認可された場所。もちろんそういうエリアであっても、ドカドカと勝手にどこにでも入っていったり、いきなりカメラやスマホを向けて写真を撮ってもいいのかというと、それは違う。あくまでもこちらはよそ者。「お邪魔します」という気持を持ち、迎え入れてくれた人たちへの心に感謝しながら接することを忘れてはならない。
取材・文・写真:山下マヌー