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モンタナの風景はなぜ特別なのか? 受け継がれてきた土地の記憶

モンタナの風景はなぜ特別なのか? 受け継がれてきた土地の記憶

TRAVEL 2026.07 モンタナ特集

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モンタナを旅していると、風景の奥に流れる時間に気づく瞬間がある。先住民族が何千年も守り、語り継いできた土地との関係。その物語を知ったとき、空や山や水辺はただの自然ではなく、人々の記憶とともに存在する風景へと変わっていく。

この土地の“成り立ち”に触れたとき、風景の見え方が変わる

モンタナを旅していると、空や山や平原がただの自然ではなく、“暮らしの記憶”として立ち上がる瞬間がある。

Three Chiefs Cultural Center で出会った、文化教育担当であり語り部(Oral Storyteller)でもあるマリー・トロシアンさん(サリッシュ族/ペンド・ドレイユ族、CSKT所属)は、この土地の成り立ちと、先住民族の哲学を語ってくれた。

「私たちは土地の世話人(caretakers)であり、守り手(stewards)。母なる大地、動物たち、そして特に水を守る責任があります。水は命なので。」

彼女の言葉に触れると「雄大な自然が残る大地」という視点だけでは、この土地の本質には届かないのだと気づく。そもそもこの大地は、人が境界を引く前から続いてきた暮らしの積み重ねでできているのだから。

何千年も続いてきた暮らしの知恵は、いまの時代にこそ必要

マリーさんは、祖先たちの暮らしを丁寧に語ってくれた。

「山へ狩りに行き、水辺をたどって食料を得ていました。必要な分、食べられる分だけをいただき、無駄にしないこと。それが私たちの生き方です。」

サリッシュ、ペンド・ドレイユ、クートネイの人々は、モンタナ、ワシントン、アイダホにまたがる広大な土地を季節に合わせて移動し、ベリーを採り、根菜を掘り、鹿やエルクを狩り、魚を獲り、そのすべてを“家族”と分かち合ってきた。

便利さと引き換えに、多くのものを失いかけている現代。必要なものを必要なだけ。それを仲間と分かち合う──その暮らしの知恵は、いまこそ思い起こすべきものなのではないだろうか。

土地・言語・文化。どれか一つでも失えば、存在そのものが揺らぐ

マリーさんの語りの中で、最も強い響きを持っていたのは“言葉”の話だった。

「もし土地も、言語も、文化も失ってしまえば、私たちは他の誰とも変わらなくなってしまいます。」

英語化が進む中、彼らはセリッシュ語とクニ語を子どもたちに教え続けている。それは単なる言語教育ではなく、自分たちが何者であるかを未来へ渡す行為でもある。

「私たちは口承の語り部(oral storytellers)。物語を語り続けなければ、私たちがこの世を去るときに失われてしまいます。」

文化を守るとは、過去を保存することではない。未来へ手渡すために、いま語り続けること。その“いま行動すべきこと”を、彼女の言葉は静かに問いかけてくる。

この土地の風景の中で、伝えていくべきものとは何か

ミッション山脈のふもとでバイソンの群れを見たとき、マリーさんの「私たちはこの地の最初の人々(first people)」という言葉が風景の中で深く響く。

「ここは創造主が私たちを置いた場所。この土地がこれからも存在し続けるよう守ることが、私たちの役割です。」

変わりゆくモンタナを前に、私たちは“失われつつあるもの”ばかりに目を向けがちだ。けれど本当に大切なのは、 この土地が何千年も守り続けてきた生き方に耳を傾けることなのかもしれない。

土地は所有物ではなく、世話をし、感謝を返し、次の世代へ渡すもの。その考え方は、モンタナだけのものではなく、いまを生きる私たちにも必要な視点だと感じる。

撮影・取材・文 山下マヌー

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