プエブラ旧市街の昼と夜〜メキシコ、マヤブルーの不思議-4
メキシコシティから東へ約100キロメートルの場所に位置するプエブラ。16世紀、スペイン人によって建設された旧市街は1987年、世界遺産に登録。スペイン風の建築物が立ち並ぶ街並みが美しい。ランドマークとなっているのが、最も有名な観光スポットである大聖堂。16世紀に建設されたバロック様式の教会で、メキシコで最も大きい教会の一つとされる。
ひとつの旅の行程で同じ場所へ二度行くということはあまりないのだが、今回スケジュールの都合で昼と夜の2回、プエブラ旧市街を歩くことになった。
どちらが好きかと聞かれたら、個人的には夜。
何といってもロマンチックなのだ。それに夜は見なくてもよいものを隠してくれるし、ライトアップされた建物が映えて、美しい。
最初に行ったのが夜だったために、第一印象が良すぎたということもあるかもしれないが、翌日の昼に見た同じ場所に、深みのなさというか、なんともいえない緩さを感じてしまう・・・。
そんなことを思いながら昼の旧市街を歩いているとき、ふと何十年かぶりに思い出したのが、シェークスピアがマクベスで書いた「きれいはきたない、きたないはきれい」という台詞。
ある人にとっては美しいと感じるものでも、ある人にはとっては逆。
自分にとって「美」なものでも他人にとっては「醜」。
つまりは、「きたない」も「きれい」も相対的な価値観でしかない・・・。
日本から遠く離れたプエブラの町を歩きながら、随分前に読んだそんなことを何故思い出したのかは、わからない。だけど旅とはそういう作用があるものだったりする。ふとした風景や景色、音や香り、光を感じた時に記憶の片隅にあるもの(もしくは忘れ去られていたもの)が引っ張り出されるということはないだろうか。
遠い過去の記憶や経験が蘇る楽しさを与えてくれた、プエブラの昼と夜に感謝しつつ、帰国したらシェイクスピアを読んでみよう・・・いや、それともスティーブンソンのジキルとハイドにするべきか・・・それが問題だ。
取材・写真・文:山下マヌー