好きな場所で食べるための移動レストラン〜カリフォルニアフードトラックドリーム vol.5
もはやフードトラックは、ホテルが建てられない場所へ自身のテントを持っていくように、レストランが建てられない場所、自分がお気に入りの場所で食事を楽しむための装置へと代わりつつある。今回の取材を通して最も強く思ったのはそういうことだ。レストランを建てられないなら、キッチンを持っていくという発想にも近い。
フードトラックが出現した1970年代当時の「安くおいしいものを提供」するだけの存在から、「素敵な場所でおいしいものを適度な価格で提供する」存在へと変化と進化を遂げたと言ってもいい。また、フードトラックのキッチンが充実したことで、腕の良いシェフが良い環境に出向いて料理をしてくれる。そんな出張サービスのようなことも可能になったし、呼べば自分たちのプライベートパーティにフードトラックで駆けつけてさえくれるのだ。
好きな場所で仲間と、時には観光客と地域の住民とが混ざり合いおいしい料理を手ごろな値段で楽しむ。それが西海岸のフードトラックであり、新しいトレンドなのだ。
今後その動きが日本にも来るのではないだろうか。地域再生の名の下、環境を壊してレストランを作らなくても、地域の素敵な場所で地域の新鮮な食材を使い、地域の食材を知り尽くした料理人がフードトラックで料理を提供してくれる。ベタにいうならフードトラックさえあれば、「絶景レストラン」が日本のどこでも可能になるというわけだ。
カリフォルニアで始まった、このうねりは近いうち必ず日本にも来ると思う。いや来てほしい。そうなることで、我々だけでなく海外からやって来るインバウンド旅行者の人たちにも、日本各地の素晴らしい場所で素晴らしい食事を楽しんでもらえる日が来るのだと確信する。
写真・取材・文:山下マヌー