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アントワープ「ルーベンスハウス」と受け継がれる17世紀の庭|巨匠自らが設計した邸宅と庭園

アントワープ「ルーベンスハウス」と受け継がれる17世紀の庭|巨匠自らが設計した邸宅と庭園

TRAVEL 2026.09 ベルギー特集

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17世紀ヨーロッパを代表する画家ペーター・パウル・ルーベンス。ベルギー・アントワープにある彼の邸宅「ルーベンスハウス」は、彼自身がイタリアで学んだ建築や庭園文化を取り入れてデザインした、まさに総合芸術の結晶です。

現在、2030年の再オープンに向けて修復が進む邸宅と庭園は、17世紀当時の植生や風景を忠実に呼び戻す壮大なプロジェクト。本記事では、画家であり外交官・建築家でもあったルーベンスがこの街に残した風景と、時代を超えて現代へと受け継がれる魅力を紐解きます。

ルーベンスハウスで知る、もう一つのルーベンス。

17世紀ヨーロッパを代表する画家ルーベンスは、この邸宅そのものをデザインした人物だった。イタリア滞在で学んだ建築や庭園文化をアントワープに持ち帰り、自ら設計した住まいを築き上げたのである。現在は2030年の再オープンを目指して修復が進められている。

誌面でも紹介したように、ベルギーは異文化を取り込み、新しい価値へと変えてきた国だ。ルーベンスもまた、その体現者だった。ローマやジェノヴァで見た中庭を自宅に再現し、街の中に突然現れる静かな庭園を設計した。噴水、花壇、緑の回廊。ここにはイタリア・ルネサンスとフランドルの感性が共存している。

現在植えられている花々は、単なるガーデニングではない。研究者たちはルーベンスの手紙や植物図鑑、絵画を手掛かりに、17世紀に実際に存在した植物だけを選び、この庭を再現している。つまり、この庭を歩くことは、ルーベンスが眺めた季節を追体験することでもある。

庭の緑のアーチは、まだ完成形ではない。現在見える骨組みには植物が巻き付き、2030年のリニューアルオープンには緑のトンネルになる予定だという。ガイドが最後に話してくれたのは、「ここにルーベンスがいたことを感じてほしい。」という一言だった。この庭の修復は、美しい庭をつくることではない。17世紀という時間をもう一度呼び戻すことなのだ。

ルーベンスは画家として知られる。しかし、この庭を歩くと、それだけでは足りないことがわかる。画家であり、美術商であり、外交官であり、建築や庭園まで設計した総合芸術家。彼が残したのは一枚の絵だけではない。アントワープという街の中に、四百年後の今も同じ空気の中を歩くことのできるという、一つの風景もまた、彼からの私たちへの贈り物。

写真 Dice.M.P.
取材・文 山下マヌー

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