瀧原宮と伊雑宮 遥かなる別宮で感じる神宮と祭りの由緒 伊勢神宮–5
長い参道と御手洗場 瀧原宮と内宮の類似点
14ある別宮のうち遠方にあることから「遥宮(とおのみや)」と呼ばれているのが、瀧原宮(たきはらのみや)と伊雑宮(いざわのみや)です。
瀧原宮の由緒は古く、2000年前までさかのぼることができます。ここは別宮の中でも格別なパワーを感じる場所。深い森に囲まれた広大な神域には、樹齢数百年の杉に囲まれた長い参道、並行して流れる頓登川(とんどがわ)、川の流れを利用した御手洗場(みたらし)があり、その先にあるのが瀧原宮です。
この造りは内宮(ないくう)と同じ。もしかするとここが内宮の原型ではないかという気もします。
厳格な空気が漂う瀧原宮と対照的に快活な空気を漂わせているのが海から近い場所にある伊雑宮です。ここでは古くから地元の人々が海の幸、山の幸の豊穣を祈願してきました。毎年6月24日に伊雑宮の御料田(ごりょうでん)で行われる御田(おみた)植式は、日本の三大御田植祭の1つです。地元の青年たちが竹を奪い合う神事が行われます。
日本人にとって米は食の中心であり、稲作は1つの文化です。稲を育てるために、田に水を引きます。その水は空から降ってきた雨が山から川へと流れたもの。川の水は海へと注がれやがて太陽の光を浴びて蒸発し、再び天へと戻ります。そして田では稲が実ります。
私たちは自然の循環の中で生きています。その感謝の心を具現化できる場が神宮ではないか。ここで20万点以上の写真を撮影してきた私はそう感じています。
伊雑宮
三重県志摩市磯部町上之群374
https://www.isejingu.or.jp/about/outerbetsugu/
瀧原宮
三重県度会郡大紀町滝原 872
https://www.isejingu.or.jp/about/outerbetsugu/
写真 宮澤正明
編集・文 今泉愛子