函館建築の美に触れる ミックスカルチャーを醸成した明治・大正の面影
港町に百年の時を刻む商家建築と洋館
函館湾に面した弁天町で、太刀川(たちかわ)家住宅店舗は今も往時の佇まいを伝えている。米穀や海産物の問屋を営んだ太刀川善吉氏が明治34年に建てた、土蔵造りの商家建築だ。
土蔵造りの太刀川家住宅店舗と、隣接する洋館ゲストハウス。大正期の華やかさを感じさせる洋館は、往時は商用の応接室として使われていた。1階は広々とした応接間とダイニング、2階にはベッドルームとバスルームがある。
「かつては店の前まで海でした。ここに北前船が横付けして、荷下ろししていたんですよ」と、6代目当主のご夫人・雅子さん。
隣に並ぶ深い緑色の建物は、大正4年に商談用の応接スペースとして増築されたもの。長らく使われていなかったこの洋館を少しずつ修復し、家族のために整えたのが雅子さんだった。
現在はゲストハウスとして一般に開かれ、銀器やリモージュ焼きの陶磁器などのコレクションや、明治・大正期の函館の洋家具職人が手掛けた年代物の家具とともに、旅人を温かく迎え入れている。「いらした方は、歴史と文化を感じるとおっしゃってくださいます」


住宅店舗は国指定重要文化財。現在、貸スペースとして、展示会、会議、パーティーなどに利用される。
雅子さんは「箱館旧市街まちづくり協議会」の一員として、この地域の魅力を伝える活動にも力を注ぐ。
「建築物は、価値のあるものを残していくことが大切。でも私たち個人がやっていくのには時間がかかります。個人では点ですが、まちづくりのためには“面”で取り組む必要がある。皆さんと力を合わせて、情報交換をしながら、できることをしていきたい」
狭いエリアに各国領事館や教会が立ち並び、異文化が凝縮してきた函館西部地区。「異文化を代々受け入れてきたのがこの地域の特徴。ミックスカルチャーの魅力に親しんでいただきたいですね」
当主夫人の太刀川雅子さん。傷んでいた洋館を、休暇に訪れる家族のために心地よい空間へと蘇らせた。
太刀川家 TACHIKAWA FAMILY’S HOUSE
北海道函館市弁天町15-15
写真 木内和美
取材・文・編集 宮崎沙綾
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