パキスタンで見た希望の瞬間 小さな教室で彼女の瞳に灯った未来を追って
才人が旅先で出会った忘れえぬ光景を綴る。
今回は世界の子どもたちの教育支援を続ける“人道写真家”
清水 匡
1970年生まれ。大学卒業後、映像制作会社にて自然・教育番組の制作に携わる。退職後、国境なき医師団日本でアフリカやアジアの活動現場の撮影・編集を担当。2003年より「国境なき子どもたち(KnK)」で広報を担うかたわら、人道写真家としても活動中。

その瞬間、女の子の瞳に光が灯(とも)ったことが、ファインダー越しにもはっきりとわかりました。
私が所属するNGO「国境なき子どもたち」は、主に海外の学習が困難な環境に身を置く子どもたちに、教育環境を提供する活動を行っています。
28年前の創設以来、15の国と地域で23万人を超す子どもたちを支援してきました。現在はフィリピンやカンボジアなど6の国と地域で活動を続けています。今回の写真は、いまも支援を続けている国の一つ、パキスタンで撮影したものです。
2005年10月8日、パキスタン北部で大地震が発生し7万人以上の尊い命が犠牲になりました。多くの学校も倒壊、子どもたちは学びの場を失いました。翌年、同国に入った私たちは現在に至るまで、学校再建や教育環境の整備を続けています。
2018年、私は活動地、マンセラ郡チャプリカタ村の学校を訪ねました。本来の校舎はやはり倒壊していて、村人手造りの簡素な小屋のような“教室”では、ちょうど算数の授業中です。ですが、教科書もノートもまるで足りず、手持ち無沙汰の子どもたちは、ただぼんやりと虚空を眺めている、そんな様子です。ところが……。
一人の女児に先生が近づきます。そして、ていねいに足し算を教え始めました。「リンゴ3個と2個、合わせると5個になるよね。ほら、指も使って数えてごらん」。すると、次の瞬間。女児の表情が一変します。真剣な眼差(まなざ)しは輝きを増し本当に嬉しそうに、足し算を理解できたことを、いや、学ぶことそのものの喜びを、彼女は満面の笑みで表したのです。
この希望に満ちた子どもたちの笑顔を一つでも増やすために、私たちは今日も活動を続けています。
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