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国枝慎吾が見た“宇宙が近い街” ロケット打ち上げが日常風景のフロリダへ

国枝慎吾が見た“宇宙が近い街” ロケット打ち上げが日常風景のフロリダへ

LIFE STYLE オーランドの空の下で

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※ この記事は、翼の王国2025年4月号に掲載されたものです。

日本ではなかなかお目にかかれないものを見ることができる、それも、オーランドの楽しみの一つです。

自然の豊かなフロリダではツルやワニ、マナティといった野生動物が身近な存在ということは以前もこちらで紹介しました。いっぽうで、人間のテクノロジーの粋を集めたものも、ここでは目の当たりにすることができます。昨年1月、オーランドに拠点を移してきてすぐのこと。同僚からこんなことを告げられました、「ここからでも、ロケットの打ち上げが見えますよ」と。聞けば、あの有名なケネディ宇宙センターまで70〜80キロほどしか離れていないというのです。

そこで、私はインターネットで打ち上げのスケジュールを調べ、発射当日、妻を伴い自宅マンションの屋上に上がってみました。すると……、見えました!東の空に、オレンジ色に光る炎と白煙を吐き出すようにしながら天高く昇っていくロケットの姿を、たしかにこの目に捉えることができたのです。

いたく感動し、すっかりロケットにハマった私たちはケネディ宇宙センターのビジターコンプレックスも訪問。かつて、幾度もミッションを成功させたNASAのスペースシャトル「アトランティス」を見学したり、人類の宇宙開発の歴史が学べる映像作品を見たり。また、ロケットの打ち上げを比較的間近で見られるツアーにも参加。発射の瞬間の、空気を震わせるほどの轟音を体感することもできました。かように、フロリダは宇宙ファンにとって、最高にハッピーな観光スポットだと思います。

ただ、NASAにスペースX、ブルーオリジンと、連邦機関や宇宙企業の拠点が数あるフロリダでは、本当に頻繁にロケットが上がるのです。多い時には週に2回も。こちらに暮らして1年と数カ月、ロケットにすっかり慣れてしまった自分もいます(苦笑)。また、学生時代にマンガ『宇宙兄弟』を愛読し、宇宙への憧れも少なからず抱いている私ですが……正直、宇宙に行ってみたいとはあまり思いません。もちろん、青く輝く地球を宇宙空間から眺めてみたいとは思います。でも、じつは私、狭いところが大の苦手なんです。少し前にも、1週間ほどの任務のはずが、宇宙船の不具合で国際宇宙ステーションから帰還できなくなってしまった宇宙飛行士のニュースがありました。もし自分がそんな目にあったらと想像しただけで、血の気が引く思いです。

やはり私は、もっぱらマンションの屋上でロケットを眺めて楽しもう、そう心に誓う今日このごろなのです。

国枝 慎吾

脊髄腫瘍のため9歳から車いす生活となり、11 歳で車いすテニスと出会う。四大大会とパラリンピックを制覇する「生涯ゴールデンスラム」を達成。23年1 月、世界ランキング1 位のまま引退。

2016年よりスポンサーシップ契約を結んでいるANAは、国枝さんの新しい挑戦を応援し続けます。