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歌舞伎俳優・尾上右近 玉三郎兄さんに連れて行っていただいた感動の「水炊き」

歌舞伎俳優・尾上右近 玉三郎兄さんに連れて行っていただいた感動の「水炊き」

LIFE STYLE KABUKI

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[私の二枚看板]第六回/案内人・尾上右近

公演で日本全国、さらには海外も回る歌舞伎俳優たち。彼らの舌を魅了した「祝着至極」のメニューを毎月2皿ずつ、紹介します。第六回は歌舞伎界期待の新鋭。

あれはもう、いまから十年以上前のことです。京都・南座でのお仕事のあと、玉三郎のお兄さん(坂東玉三郎)に連れて行っていただいたのが、今回ご紹介する「鳥彌三」でした。

まだ、十代だった私は、歴史ある高級店の雰囲気、そして、なによりも尊敬する大先輩と食事を共にするということで、普通に考えれば、お料理の味もわからないほど、緊張していました。
ところが、食事前に供された鶏スープを一口、口に含んだ瞬間、ガチガチだった私の心が一気に溶け出すような、そんな美味しさに驚かされたのを覚えています。その後、いただいた水炊きも、心身を芯から温めてくれました。その衝撃的な美味しさに感銘を受けて以来、京都でお仕事があるときは必ず寄らせてもらっています。じつは、この取材依頼を受けた日の前の晩も、鳥彌三さんで食事をさせていただいて。それぐらい、いまでは大好きなお店なんです。

もう1店は、歌舞伎座近くのインド料理の名店「ナイルレストラン」です。
カレー好きを公言している私ですが、その私がカレーに目覚める前、子どものころから家族で通っていたお店。カレーマニア右近の原点、それがここ、ナイルなんです。
このお店で私がいまハマっているのが、数あるメニューのなかでももっとも辛いカレー、「海老カレーライス」。すごく辛いのに、さっぱりといただけるカレーなのですが、私はこれとは別に、「チキンマサラ」も注文します。サラッとした海老カレーに、コクのあるチキンマサラをチョイ足ししながら食べるのが、サイコーに美味しいんです。

20歳を過ぎたころから、カレーを極めようと思った私。レトルトも含めると、年間に360食カレーを食べたこともある。そんな私が、それでもやっぱりナイルをイチオシするのって、なんだかちょっと、悔しい気持ちも(苦笑)。でも、仕方ありません。ここは、カレーが大好きな自分に気づかせてくれた、私の原点。もう、こればかりは動かしようがありません。歌舞伎座との近さも含め、歌舞伎俳優・尾上右近が共に歩んでいきたい特別なお店、それがここ、ナイルレストランなんです。

おのえ・うこん

92年、東京生まれ。清元宗家・七代目清元延寿太夫の次男。曾祖父は六代目尾上菊五郎、母方の祖父は俳優・鶴田浩二。7歳、歌舞伎座『舞鶴雪月花』で初舞台。05年、二代目尾上右近を襲名し、18年には清元栄寿太夫を襲名。歌舞伎伴奏音楽の清元唄方も勤める歌舞伎界の〝二刀流〟。本年3月は京都南座『三月花形歌舞伎』に出演、主役の早野勘平ほかを勤める。3月17日には映画『わたしの幸せな結婚』が公開。

鳥彌三

京都府京都市下京区西石垣通四条下ル斉藤町136
tel:075-351-0555
営業時間:13:00~22:00(※日によって開店時間が変わることも。来店前に要電話)
定休日:不定休

天明8年(1788年)創業の、鳥料理の名店。尾上右近さんが「心身を芯から温めてくれる」と話す名物「水炊き」は、鶏ガラだけを三日間強火で炊き込む秘伝の白いスープが特徴で、坂本龍馬をはじめ多くの歴史上の名士も愛した逸品。前菜、雑炊、香の物などがついたコース(13,200円)でいただける。

https://kakg600.gorp.jp

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ナイルレストラン

東京都中央区銀座4丁目10-7
tel:03-3541-8246
営業時間:11:30~21:30(日祭日は20:30まで)
定休日:火曜、第一・三水曜
(※3月2日ごろまでは休業の予定。最新の営業情報については、直接店舗にお問い合わせください)

1949年創業の、日本最古のインド料理専門店。右近さんが「歌舞伎座で舞台があるときは1ヶ月間、毎日通うことも」と話す通り、歌舞伎座からも近く、幼いころからこの店の味に慣れ親しんだ歌舞伎俳優も数多い。右近さんオススメの「海老カレーライス」(1,450円)、「チキンマサラ」(1,550円)のほか、常連の多くが注文する人気メニューが、夜でも注文OKの「ムルギーランチ(インド風鶏カレー)」(1,500円)。

https://www.ginza-nair.com

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絵:矢野元晴