“イチゴ抜き”のショートケーキ? 千駄ヶ谷で出会った予想を裏切る軽やかなおいしさ
差し入れでいただいた看板商品「みるく」は、見た目だけなら驚くほどシンプルだった。しかし一口食べて、その印象は一変する。軽やかな味わいの裏側には、素材と製法への徹底したこだわりがあった。基本に忠実であることの強さを、この小さな名店は静かに証明している。
今回は東京・千駄ヶ谷の洋菓子店「おかしやうっちー」を紹介します。
ふざけてるんです、店名からして(苦笑)。でも、私は大好きなんです。
最初、私はこの店の看板商品「みるく」を“差し入れ”でいただきました。商売っ気ゼロの白い箱、中から出てきたのは女性の拳ほどの、白いフワッとしたクリームの塊1個。
「?」と思いながら、私はアシスタントと二人でシェアしていただくことに。フォークで半分に割ると、その断面にはほどよくクリームを挟んだ3段のスポンジが。簡単にいえば、イチゴショートケーキの“イチゴ抜き”です。ますます「?」となりましたが……。
一口食べたら、めっちゃおいしいんです。クリーミーなのにすごく軽くて、ぺろっと秒で完食です。いつも、想定外のおいしいものをいただくと「やられた」と唸(うな)ってしまう私ですが、このときは「なんなん、これ?」とつぶやいていました。
すぐ店に連絡をし、私は店主に「友だちになろう」と言いました(笑)。聞けば、軽さの秘密は極端に低く抑えた乳脂肪分なんだとか。全国を回って材料を吟味しておられると。店主が一人で作っているので、店頭に並ぶ数には限りがあり、それがあっという間に完売するのです。
そして、その作り方は基本に忠実、シンプルそのもの。材料や温度などお菓子作りのなにからなにまでを、自ら徹底的に管理していると。つまり、驚愕(きょうがく)の逸品を生み出すコツは、すべてに誠実に向き合うということなのだと思います。そして、私はシンプルに、基本に忠実であるからこそ、彼の作るお菓子に無限の可能性を感じています。
食材と花材、同じ生物を素材とする身。彼の姿勢を手本とし、改めて花と向き合う気持ちを強くしている今日このごろです。

赤井勝(あかい・まさる)
装花・文 赤井勝
編集 仲本剛
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