トップCEOの整え術─ユニバーサルミュージック藤倉尚のウェルネス習慣
トップアスリート、アーティスト、経営者が通う会員制パーソナルトレーニングジム「デポルターレクラブ」の代表・竹下雄真さんが、各界の第一線で活躍するトップランナーと対談し、「旅」を通じて見えてくるウェルネスや仕事術などの秘訣などを伺う連載企画。第4シリーズのゲストには、ユニバーサル ミュージック合同会社社長兼CEO・藤倉尚さんをお迎え、「人を愛する”ビジネス哲学」をテーマに、ヒットを生み出すための人材の活用方法やリーダーシップ論、そして、心と身体を整えるためのリトリートの考え方についてお話を聞きました。(全5回の4回目)
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竹下 藤倉さんがデポルターレに通われるようになったのは2014年ですよね。もう11年になりますが、本当に継続されていて、模範的なお客様だと思っています。
藤倉 いまでこそお褒めいただきますが、入会のきっかけは健康への危機感でした。海外出張や会食が増え、気づけば体重は6キロ増。お腹もぽっこり出てしまい、健康診断では「このままだと成人病まっしぐら」と言われるほどでした。アーティストにビジュアルについて話す立場でもありますし、自分自身も減量の必要性を感じて、そこからトレーニングを始めました。
竹下 ずっとシェイプされた体を維持されていますし、会社の業績も右肩上がり。海外出張も多い中、出発前にトレーニングをしたり、滞在先で体を整えたりされていますよね。リフレッシュにはサーフィンもされていますし。

藤倉 サーフィンを始めたのは、全然格好いい理由じゃないんですよ(笑)。40代半ばで社長になった当時は、音楽業界ではまだ若手なほうで珍しかったこともあり、良くも悪くも多少注目されているような状況でした。だからこそ「勘違いしたくない」と思ったんです。それで新しいことを始めようと、サーフィンと料理、中国語に挑戦しましたが、料理と中国語は早々に断念しました。料理はクッキングスクールに行くのが辛かったですね(笑)。男性クラスに入れなくて、女性ばかりのクラスに入ったら、男性は定年退職された方と私だけ。ちょっと馴染めなくてやめました(笑)。
竹下 それはかなり気まずいですね(笑)。
藤倉 サーフィンを始めたのは、自分の意思というよりも偶然でした。当時はアメリカ本社への出張が憂鬱で、何を言われるのかと毎回不安でしたし、業績もあまり良くなかったこともあり、独特の緊張感がありました。そんなとき、同じホテルに滞在していた他の国の社長が「これからサーフィン行くけど、一緒にどう?」と誘ってくれて。それがきっかけで初挑戦しました。宿泊ホテルの目の前がサンタモニカビーチやベニスビーチという環境も、大きな後押しになったと思います。料理も語学も続きませんでしたが、サーフィンだけはハマってしまい、アメリカ出張のたびに欠かさず続けています。
竹下 サーフィンをしているときはどんな気分になるんですか?
藤倉 ジムで運動しているときと同じ感覚ですね。体を動かすと、頭のオーバーヒートが収まり、穏やかになれます。仕事中はどうしてもピリピリしがちですが、運動するとイライラが静まり、逆に頭を使いたくなるというか、仕事に向かう意欲が湧くんです。
竹下 まさに心と体の一体感ですね。素晴らしいスイッチだと思います。心と体は繋がっていますから、イライラや不安の解消には運動やスポーツが最適です。ウェルネスの観点でも、感情を整える大事な手段ですね。

藤倉 運動中にアイデアが浮かぶことも多いです。走っているときやトレーニング中に「忘れていた大事なこと」を思い出したり、新しい発想が出てきたり。トレーナーの方には、いつも申し訳ないと思っていますが、トレーニング中もスマホが傍にあることがほとんどです。
竹下 でも、その時間に生まれるアイデアのメリットのほうが大きいですよね。実は僕も、トレーニング中に浮かんだアイデアを逃さないよう、必ず携帯を持っています。シャワーを浴びたりすると忘れちゃうんですよね(笑)。いろいろな方に伺っても、フィジカルな動作中に頭の中が整理されるという話はよく聞きます。藤倉さんの場合、最初は健康のために始めたトレーニングが、今ではクリエイティブの源泉になっているのは素晴らしいですね。
藤倉 そうですね、無理せず続けられることが大事だと思います。「デジタルデトックス」をうまく取り入れていらっしゃる方もいますが、私は完全に切るのは逆にストレスになるんですよ。だからジムやサーフィンの時間を“自然なデジタルデトックス”と捉え、無理のない範囲で距離を置くようにしています。
竹下 普段の1日のスケジュールはどんな感じですか?
藤倉 今は完全に朝型です。4時半から5時半くらいに起きます。以前は夜遅くまで会食をして朝は遅く起きる生活でしたが、それでは体も心もバランスを崩してしまいます。社長になってからはLA本社とのミーティングも増えたので、最高のパフォーマンスを発揮できるよう朝の時間を充実させています。メール対応やニュースチェックのほか、読書など思考を整理する時間もとても大切です。午前中は社内ミーティング、午後は外部の方々と会う。夜はライブに行くか、仕事関係者との会食が基本です。
竹下 お休みの日も同じようなルーティンですか?
藤倉 はい、変わりません。土日もライブがありますし、出張も多いので、朝は早く起きますね。
竹下 海外出張が多い中で、時差ボケ対策はどうされていますか?
藤倉 出発の1日前から現地時間に合わせて行動するようにしています。フライト前に寝不足にしておいて機内で眠るなど、無理やりでも現地時間に合わせる。そうしないと、到着後のミーティングが本当に辛くなりますし、時差ボケのままでは「何のために海外まで来たのか」となってしまいますから。
竹下 その徹底ぶりが、いつもエネルギッシュでいらっしゃる理由ですね。
藤倉 これからもジムでサポートいただければ嬉しいです。
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ユニバーサル ミュージック合同会社社長兼最高経営責任者(CEO) 藤倉 尚 | ふじくら なおし
1967年東京都生まれ。1992年にポリドール株式会社(現・ユニバーサル ミュージック合同会社)入社。邦楽レーベル・ユニバーサルシグマ宣伝本部本部長、同プロダクトマネジメント本部本部長などを経て2008年、執行役員就任。2012年に副社長兼執行役員就任、邦楽事業を統括。2014年1月より現職。米ビルボード誌がアメリカ以外の国で音楽ビジネスの成功を牽引しているリーダーを称える【Billboard Global Power Players】に2019年、2021年から2025年と日本から初めての5年連続で選出され、計6度の受賞に輝いた。

デポルターレクラブ代表 竹下 雄真 | たけした ゆうま
会員制トレーニングジム「デポルターレクラブ」代表。1979年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。早稲田大学スポーツ科学研究科修了。都内パーソナルトレーニングジムにてトップアスリートをはじめ多くの著名人の肉体改造に携わる。著書に『外資系エリートはすでに始めているヨガの習慣』(ダイヤモンド社)、『ビジネスアスリートのための腸コンディショニング』(パブラボ)などがある。

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