早く降りたい派のあなたへ 飛行機のプロ搭乗客が最後尾の座席を愛する理由

プロ搭乗客の私は、窓側原理主義。窓からの景色を楽しみ尽くすためだけに、これといって用もないのにわざわざ搭乗予約を入れてしまう。しかしながら、急な用件などが入り、予約のタイミングを逸したときに通路側や中央席に収まることもある。離陸前、着陸後に空港内をタキシング中に空港内の設備や、他の飛行機が駐機している光景が見たくてしょうがないのに、窓から離れた席に座っているときは瞑想することにしている。
地上走行中、どの誘導路を通ってランウェイ何番から飛び立つのか、操舵の傾きやスピード、揺れなどから推測するのもなかなか楽しいものだ。どの席であっても、その席でできる限りの楽しみ方を瞬時に思いつけるよう普段からイメトレしている。

CAさんからたびたび「先日も一番後ろにお座りでしたよね」とよく言われている友人がいる。「最後尾倶楽部」を自称し、予約の際にできる限り機内最後尾の席をアサインしている。同じ金額を払っているなら一秒でも長く飛行機の中にいられる席につきたいそうだ。
確かに、出発空港で乗り込んでから到着まで、フライト時間はどの席でも同じだが、到着地で前の扉から順に降りていくと、最後尾だと機内滞在時間は、ほんの数分長い。
その彼は、最上級のステイタスホルダーで、Group1で真っ先に飛行機に乗り込み、綺麗に清掃された機内を、最後尾まで通路を歩く途中、CAさんたちから「ご搭乗ありがとうございます」と言われるのが嬉しいと。私が、それは「人生最大の花道」かと言うと、本人は否定しない。
手荷物を預けている場合、早く降りたところで返却ターンテーブルの前でしばらく待っていなければならないし、ほかには、機種によってはお手洗いが近くて便利とか、国際線ではギャレーに飲み物が置いてある、席に座っていながら機内全体を目視できるなど、本人曰く、後方席のほうがとにかく安全、安心なんだそうだ。できるだけ早く空港に到着してチェックイン、手荷物を預け、搭乗案内が始まったらとっとと飛行機に乗り込むなんて、搭乗客の見本のような振る舞いだ。
そもそも、架空の「最後尾倶楽部」入会の話は置いといて、そのスムーズな搭乗所作は誰もが見習いたいものだ。空港内、機内でのカスタマーハラスメントに関する注意事項がポスターや、機内モニターで警告されるようになった。機内サービスや保安業務で乗務員の皆さんが多忙な最中、延々と自身の搭乗記録やステータスが何年目でなどと自慢し続ける「語り部」、自身で調べて書けばいいフライトログブックを当たり前のように渡して書かせようとする客を頻繁に見かける。お互い楽しい搭乗になるよう心がけたいものだ。
〜つづく
イラストレーション ソリマチアキラ
パラダイス 山元 | ぱらだいす やまもと
プロ搭乗客。 ANA ミリオンマイラー。音楽家。餃子レストラン「荻窪餃子 蔓餃苑」オーナーシェフ。著書に『読む餃子』、英語版・フランス語版餃子レシピ本『GYOZA』、『パラダイス山元の飛行機の乗り方』『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』などがある。全国各地で開催中の「皮からつくる本気の餃子づくり教室」などの出演イベントの詳細は X(旧Twitter) で発信中。
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